カレッジマネジメント191号
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56リクルート カレッジマネジメント191 / Mar. - Apr. 2015アメリカ教育省の統計では、Professional staとNonprofessional staの2つに分類し、前者をさらにManagerial, Faculty, Graduate assistants, Other professionalに分けて整理している(正確に表すため英語表記をそのまま用いる)。さらに詳細に職種を確認するために、代表的な高等教育専門紙The Chronicle of Higher Educationが提供する求人情報を見ると、職種がFaculty & Research,Administrative, Executiveなどに大別されている。Executiveには日本の総長、学長、副学長などのほか、Provost,Executive directorsなどが含まれる。Administrativeは、Business & Administrative Aairs,Academic Aairs,Student Aairs,Deansの4つに分かれ、前3者はそれぞれがさらに15から20程度の職種に分類され、その分類ごとに具体的な求人が掲載されている。この求人情報をみると、雇用の流動性が高く、求める職ごとに職務内容、要件、処遇などを示して個別に採用を行うアメリカの大学の特徴がよく分かる。制度やシステム面でアメリカの大学に学ぶ点は多いが、労働市場や雇用慣行の違いを十分に考慮する必要がある。また、職種ごとに形成される職能団体の存在や大学院の高等教育プログラムなども、プロフェッショナルに求められる能力の養成に重要な役割を果たしており、高度専門職の導入にあたっては、その育成機能をどのような形で担保するかについてもあわせて考えておかなければならない。このような点も踏まえつつ、現在、我が国で検討されている高度専門職は、アメリカにおけるどのようなカテゴリーの職を意味するのか、専門職とプロフェッショナルの関係をどう考えるかなど、概念や定義を明らかにしながら議論を重ねていく必要がある。基幹的業務を担う社員の多くは高度専門職高度専門職をめぐる議論を、企業など大学関係者以外が聞いたらどのように感じるだろうか。大学の諸機能を担う人的資源が、質と量の両面において充足されているのか、不足しているならば、どのように調達または育成すべきなのかは、一義的には大学自身の責任で考え、対処すべき課題である。職員の配置・育成・処遇等に関する事柄まで、国が問題点と解決の方向性を示し、政策的に後押しするというやり方が一般社会に理解されるとも思えない。企業において専門職とは何か、即座に浮かぶのは法務、知的財産、研究開発などであろう。これらの機能にとどまらず、企業は、経理・財務、人事、広報・マーケティング、営業、調達、設計・開発、生産、設備、情報システムなど、あらゆる機能において高度化と効率化を追求している。基幹的業務を担う社員はそれぞれの職務において「高度専門職」であることが求められているといって過言ではない。日本企業には、異なる職能分野を幅広く経験するジェネラリストが多く、特定の職能分野の経験年数が長いスペシャリストは少ないと理解されがちだが、様々な調査から、後者の方が主であることが明らかになってきた。確かに異動はあるが、営業内での担当顧客や地域の変更、人事や経理など同一職能内での本社と事業所間の異動、関係の深い隣接機能間の異動などが中心となっているようである。ただ、その日本企業もアメリカやドイツとの比較では相対的に職能経験の幅が広いといわれている。日本企業の人材育成の現状については、中小企業を中心に人材育成に課題があると考える経営者が多く、大企業においても人材育成機能の低下や戦略を創出できるリーダー人材の不足などを指摘する声も聞かれる。日本企業も人材育成面で様々な課題を抱えていることを付け加えておきたい。強化すべき機能とその方法を筋道立てて検討教員と事務職員といった従来の職種区分を守りながら、大学の諸機能の高度化と効率化を追求することは難しい。その一方で、第三の職種を設ければ、教員と事務職員の関係に加えて、教員と新職種、事務職員と新職種という新たな関係も生じ、運営がより複雑化する可能性もある。まず行うべきは、大学業務全体を点検し、如何なる機能が不足しているか、強化すべき機能は何かを洗い出すことである。その上で、①それは組織設計の問題なのか、それを担う人
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