カレッジマネジメント192号
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12リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015渡邊あや 津田塾大学 学芸学部 准教授 (前 国立教育政策研究所 総括研究官)教育組織と教員組織の分離の類型大学において組織の見直しが進む中、近年増加している教育組織と教員組織(研究組織)の分離(以降、「教教分離」)。ある人は「形式的なもので本質的な変化を伴うものではない」と言い、またある人は「大学内部の組織の在り方を大きく変え得るものである」と言う。急増したのは国立大学の法人化以降のことであり、未だ多くの大学がその可能性を模索している状況にあって、教教分離により生じる実質的な変化や効果を総括するのは時期尚早だろう。しかし、教教分離後の制度設計如何で、大学の根幹を成す、意思決定のしくみやヒト(人事)・カネ(予算)の流れを変える可能性があることもまた事実だ。では、改革に踏み切った大学は、「改革後」の組織をどのように設計しているのだろうか。ここでは、教教分離後の教育組織と教員組織の「かたち」を3つの切り口から整理したい。一つ目は、教員組織をどこに位置づけるかという切り口である。これには、教員の所属組織を大学院に置くモデルと、大学院でも学部でもない中間的なところに置くモデルの二つがある。「教員の所属を大学院とする」と言うと、大学院の重点化や部局化により、教員の所属が大学院に変わることを意味すると捉えられることも少なくない。実際、1990年代末以降、国立の研究型大学において広がった大学院重点化・部局化と同時に導入された事例も多い。しかし、教員組織を大学院に置く前者のモデルでは、教員組織を大学院に移した後、学生が所属する組織からも分離する形をとっている点において、単なる重点化・部局化とは異なっている(図1参照)。一方、後者の中間的な位置づけのモデルでは、教員の所属は大学院とはならない。そのため、教員全員を大学院所属とすることが難しい場合(例えば、全ての学部が大学院を持っているわけではない場合など)においても対応可能であるため、前者に比べると比較的汎用性の高いモデルとなる。こうした特徴の違いから、前者は研究を基盤とする組織分離、後者は教育を基盤とする(授業の供給等、教育提供の視点に基づく)組織分離と説明されることもある。前者の代表的事例とされるのが九州大学であり、後者の代表的事例が金沢大学である。いずれもそれぞれのモデルの先駆的事例として、組織分離を検討する大学に影響を与えている。二つ目の分類の切り口は教員組織の設計である。既に組織の分離を実行した大学が採用した教員組織の形教員組織の位置づけ教員組織の制度設計図1教員組織の位置づけによる分類● 研究型組織分離教員組織(研究組織)教育組織(大学院)教育組織(学部)教員組織(研究組織)教育組織(大学院)教育組織(学部)● 教育型組織分離注:本類型は矢田俊文氏が提示したモデルを2つに集約し、アレンジを加えたものである。

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