カレッジマネジメント192号
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13リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015特集 変革のドライブとなる組織運営改革は、可能性を含めて考えると、主に四つの類型に分けることができる(図2参照)。第一の類型は、組織を①人文社会科学系、②理工系(自然科学系)、③生命(医療)系の三つの領域に大括り化するものである(医学系の学部を持たない大学の場合など、学部編成により二つの領域の場合もある)。このモデルは、柔軟な教育供給体制の構築や人的資源の最適配置・合理化との親和性が高いとされる。今号において取り上げている大学では、金沢大学がこれに当てはまる。第二の類型は、大括り化した三つの領域(大学の学部編成によっては二領域)に+αとして第四の組織を設定しているモデルである。今号において取り上げている中では、高知大学がこれに当たる。このモデルを採用している大学では、+αの組織のあり方に独自の工夫が凝らされていることが多い。第三の類型は細分化型である。より細分化された分野ごとに教員集団をまとめたのがこのモデルである。今号において取り上げている中では、札幌大学がこのモデルに該当する。同分野を専門とする教員が学内に分散している場合も少なくない中で、分野別の組織を編成することで、共同研究の促進や合理的な教育供給体制の構築などにおいて、効果的とされる。現行のモデルは、主にこの三種に分類されるが、一元的な組織として教員組織を設定するなど(一元化型)、その他の類型もあり得る。三つ目の分類の切り口は、教育組織と教員組織の対応関係である。①教育組織と教員組織が一致しているモデル、②教育組織と教員組織が原則として一致しているものの例外的な組織があるモデル、③教育組織と教員組織が対応していないモデル、がある。教育組織と教員組織が対応していない場合には責任の所在の明確化に課題が残るとされる一方、組織を対応させた場合には、組織分離のメリットを活かしきれないという指摘もある。また、通常、教育組織と教員組織が対応している場合は変化が比較的小さなものと考えられているが、教育組織自体の大規模な改革を伴っている場合などもあることから、一般化することはできない。なお、今号において取り上げている大学では、金沢大学と札幌大学が①、高知大学が②に位置づけられる。このうち、金沢大学と札幌大学は組織分離と同時に教育組織の大規模な改革を行っている。●以上、教育組織と教員組織の分離の類型を三つの切り口から検討してきた。「教育組織と教員組織」と一口に言ってもその形は様々だ。柔軟な教育プログラムの創設、柔軟な授業供給体制の確立、分野横断的な研究の推進、人員の最適配置と合理化。各大学が掲げる「教教分離」の狙いは多岐にわたる。それらからは、組織が抱える課題の解決や状況の改善、将来直面するであろう事態への備えのための総合的ソリューションとしての期待が窺える。各大学は改革に何を期待しているのか。何を優先しようとしているのか。組織を分離することにより何を実行しようとしているのか。そのことを知る手掛かりが、教育組織と教員組織の制度設計の中にある。そこには、制度に込められた各大学の「思い」が見えるからだ。「思いは制度に宿る」――。後ろのページでは、教育組織と教員組織を分離した大学において進められた改革の具体的事例を紹介している。各大学の「ストーリー」から、各大学が制度に込めた「思い」の一端に迫る。教育組織と教員組織の対応図2教員組織の制度設計による分類教員組織● 一元化型教員組織人社理工生命教員組織人社理工+α生命教員組織● 大括り型● 大括り+α型● 細分化型
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