カレッジマネジメント192号
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16年もの歳月がかかっている。これを長いと見るか、短いと見るかは読者に委ねたい。少なくとも、この制度移行は、金沢大学関係者が学生に向き合い、時間と労力を注ぎ込んで出した、一つの結論であったことに間違いはない。意思決定がスピードアップそれでは、学域学類制は金沢大学に何をもたらしたのであろうか。教学上の観点からすると、当初の意図の通り、学生が専門を入学後に決められる点は明らかなメリットである。既に紹介した通り、多くの学類では1年生で学域共通科目や学類共通科目を受け、専門分野の基礎を経験したうえで自身が所属するコースを決められる(ただし実習等の関係から、医学、薬学や、保健学の一部、学校教育学(教員養成)を除く)。この仕組みを調えることができたことは特筆に値する。むしろ、学域学類制は教学だけでなく、マネジメントの観点からも大きなアドバンテージをもたらすことにも触れねばならない。部局長の人数が減った結果、意思決定のスピードが上がったことは大きなメリットであると、山崎学長は語る。連絡を密に取り、頻繁に議論するにしても、学部の壁がなくなったことによって「関係者のベクトルを揃えるための努力が極めて少なく済むようになった」という。例えば現在、重要な会議体として位置づけられている大学改革推進委員会は、10人強(学長、理事、副学長、研究域長、研究科長、研究所長、病院長、共同施設長の代表等)程度で開かれている【図表2】。改革前の評議会を例に取れば、会議参加者は50名を上回るので、情報共有や議論にかかる時間やコストは明らかに下がっている。教員組織と教育組織の分離は、大学の教育研究に特色を出しやすくするというメリットもある。教員の所属組織である「研究域」は複数分野を大括りにしているため、専門分野に縛られることなく、戦略的な観点から特定の研究領域の人員を増やすことも可能になるという大きな利点がある。教育に関しても、既に紹介した準専任制度を利用することで、重視したい教育領域に人員を追加的に充てることができるというメリットがある。このように、再編・統合は柔軟な教育研究、大学経営を可能にしていくポテンシャルを秘めているが、学域学類制への移行が利点のみというわけではもちろんなく、制度移行に伴う課題にも直面した。当然のことながら、これほどの大改革が学内外にすんなり浸透していったわけではなかった。例えば、当初、受験雑誌には学域のみが取り上げられ学類単位が扱われなかったために、金沢大学で何が学べるかが受験生からは見えにくくなるという問題が生じた(現在は受験雑誌への説明を重ねた結果、この問題は一誌を除いて解消されている)。学びたい分野がはっきり決まっている学生にとっても、自分が何を学べるかははっきりしないという問題があった。教学上の課題のみならず、管理運営上の負担にも直面した。移行から7年目を迎えて解消されているものの、完全に移行しきるまでは旧来の学部学科に関する会議も並行して開くことになり、管理運営上の負担も大きなものがあった。いずれの問題も避けがたい問題であり、地道に取り組む以外に道はなかった。このような問題にも直面しつつ、2008年リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015図表2 現在の運営組織(一部抜粋) 【委員】1学長2理事3副学長4研究域長5人間社会環境研究科長6自然科学研究科長7医薬保健学総合研究科長8がん進展制御研究所長9附属病院長10学内共同教育研究施設の長から 学長が指名する者 1名11その他学長が特に必要と認めた者理事・副学長総務・人事・施設担当理事・副学長統括・改革・研究・財務担当理事・副学長国際・附属病院・同窓会担当理事・副学長教育担当理事・副学長企画評価・情報・社会貢献担当理事特命担当学長役員会教育研究評議会経営協議会研究戦略室大学改革推進室企画評価会議大学改革推進委員会

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