カレッジマネジメント192号
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20して支援を惜しまなかった。佐藤理事長は就任後、「『教員組織』、『事務局』、『労働組合』、『同窓会』の四者が、ある時には手を組み、ある時には反発しあいながら意思決定が行われていく」という大学運営の複雑性を目の当たりにした。そこから、「それぞれの会議で議論を行っていくことは重要だが、全ての構成員が賛同するのを待っていては、何も進まない」という認識を持ったという。前述の松本理事による説明のように、札幌大学が「幾つもの誤った判断や認識が重なって」苦境におかれたのだとすれば、改革に向かう土壌もまた、教職員の危機感や教育改革への熱意の高まりなど、幾つもの条件が重なったことにより形成されていったと考えるべきだろう。それでは、山田理事・副学長の説明を踏まえ、桑原学長体制下での改革の全体像を概観しよう。札幌大学が実施した組織改革は、冒頭でも触れたように、大きく2段階に整理できる(図表3)。第一の段階は2013年4月より従来の5学部が1学群1学域13専攻へと一元化された改革である。教育組織一元化の主な狙いは、①教養教育と専門教育とのバランスをとること、②教育資源を自由に融通できるような可塑性のある体制を構築すること、の2点だという。これまで、学生は入試の時点で所属する学部を選択していたわけだが、1学群制の下では、全学生が地域共創学群に所属する。1年次には基盤教育を中心に学習し、2年次までに各専攻を選択のうえ学ぶ「レイターマッチング」という仕組みが導入された。第二の段階は、2015年4月から開始された新たな意思決定の仕組み、即ち全学で唯一の意思決定に関わる審議・調整機関である教育研究協議会の創設だ。教育研究協議会創設の狙いは、各学部に分散していた意思決定の権限を学長の下に集約することで、意思決定に掛かる時間や労力を削減し、決定までのスピードを上げることだ。実は、1学群化された2013年度の時点では、従来の学部に近い学類(教育組織)と学系(教員(研究)組織)が設置され、学類・学系会議に意思決定の権限が相当程度認められていた。しかし、この教育研究協議会の設置により、学長、副学長、各学系の審議員(全教員から互選で選出)、専攻コーディネーターに全学の意思統一が委ねられることとなり、1学群化のコンセプトがより徹底されたのだ。このような大胆な改革は、一朝一夕に実現されたわけではない。山田理事・副学長が2011年度以降の4年間を「毎年、違うことをやってきた」と総括するように、関係者の粘り強さと忍耐による地道な取り組みの積み重ねが結実したものだった。まず、2011年度には、1学部(学群)化の立案が行われた。これを支えたのは、同年度より理事長直下に置かれた政策室という組織だ。政策室は、副学長と教員理事により構成され、理事長の諮問に対して答申を行う機能を持っていた。政策室は当初より1学部(学群)案を提示していたが、そのリクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015二度の組織改革改革は地道な取り組みの積み重ね図表3 組織改革の変遷5学部長 ● 2013/4~ ● 2015/4~ 大学(学士) 大学(学士) 大学院(修士) 大学院(修士) 5学部教授会 学長 学群会議 5研究科長 5研究科委員会 教員 6学類長 6学系長 6学類会議 6学系会議 学生 (1学群) 学生 (5学部) 学生 (1学群) 教員 各種審査会 6学系ミーティング 学長 (副学長) 教育研究協議会 【地域共創学群(学部)・大学院共通の教授会】 (6学系の審議員、コーディネーターなどから 構成されることになる) 学生 (5研究科) 学生 (5研究科) 学生 (5学部)

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