カレッジマネジメント192号
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22青い空と青い海、そして太平洋を流れる群青色の黒潮―。これらをモチーフにした学章が象徴するイメージそのままに、自然豊かな南国土佐の地に3つのキャンパスを構える高知大学。大学が有する人的資源・知的資源を駆使することを通じて地域に貢献することを目指しつつ、同時に、地域が持つ豊かな資源を大学の教育・研究・社会貢献活動の中に取り込み、これを活用することを通じて、大学のプロファイル強化を図ってきた。その舵取り同様、組織においても、大胆な改革を展開してきている。その中で、教育組織と教員組織の分離は、どのような変化を組織にもたらしたのだろうか。高知大学における近年の組織運営改革とそれらにおける組織分離のインパクトについて、脇口宏学長と辻田宏副学長に話をうかがった。統合と法人化─二つの大きな変化の渦中の組織改革現在の高知大学は、2003年10月、旧高知大学と高知医科大学が統合したことにより誕生した。組織文化の異なる2つの大学の統合、さらに国立大学の法人化。高知大学が今に連なる組織運営改革に着手したのは、大きな変化が畳み掛けるように訪れた直後のことであった。具体的な契機となったのは、全学的視点で学部・学科のあり方を見直すことを求めた、2004年4月の役員会による提言である。これを受け、同年6月に設置されたのが、「高知大学のあり方検討ワーキング」で、総務担当理事を座長、教育担当理事を副座長とし、各部局から学部長、副学部長クラスの代表が委員として召集された。学部再編を含む様々な案の検討を経て、ワーキングがたどり着いた結論は、研究科を1つの傘のもとに再編するという大学院の改革であった。この改革で目指されたのは、社会変化への対応である。教育・研究において学際性が求められる中、大学の「規模的・資源的特性」を踏まえつつ、これに応えるソリューションとして考案されたのが、研究科の再編による「文理統合型」大学院の創設であった。大学院における教育・研究活動の学際性を、学際的組織の構築でもって担保しようとしたのである。「大学院のあり方ワーキング」「大学院改組検討委員会」「大学院改組実施検討本部」等、段階的に進められた制度設計に関する議論を経て、2008年4月、新たな大学院「総合人間自然科学研究科」がスタートしている。ボトムアップ型の組織づくり大学院の一元化と学際化を旨とする改革とともに実行されたのが、教育組織と教員組織の分離である。当時は、大学院重点化や部局化の流れの中で、教員の所属を大学院へと移す大学が増え、その中には教育組織と教員組織の分離に踏み切ったところもあったことから、高知大学でも同様の方策が検討された。しかし、組織体制の実態に照らして、高知大学の文脈にはそぐわないものと判断され、学部からも大学院か「教教分離」が生んだ教育・研究の新たな芽──地域性と学際性をキーワードに学部を創設リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015高知大学C A S E3辻田 宏 副学長脇口 宏 学長

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