カレッジマネジメント192号
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23らも独立した形で教員組織を設定する現在の形が選択されたという。これにより、教員はこれまで所属していた学部から切り離され、新たに設置された「教育研究部」に所属することとなった。高知大学では、教員組織の総体である教育研究部の下に「学系」が、さらにその下に「部門」がそれぞれ置かれている。各学系、部門の構成は図1の通りである。高知大学において興味深いのは、教員組織における「総合科学系」の存在である。そもそも「総合科学系」は、文理横断の幅広い学問分野を統合する「黒潮圏科学」の創設を目指した独立研究科である「黒潮圏海洋科学研究科」(2004年4月設置:現「黒潮圏総合科学専攻」)の教員の受け皿として設定されたものであった。その後、組織改革の進展に伴い、この学系に新たな部門を置くことが構想されたのである。部門の新設の手法も興味深い。教員の教育研究上の関心に応じて新しい組織を創ることを認め、ユニット単位での公募を行ったのである。審査を経て選ばれたのは、「地域協働教育学部門」「生命環境医学部門」「複合領域科学部門」の3部門であった。これにより、2010年度に4部門体制の総合科学系がスタートしている。ではなぜ高知大学は、教育組織と教員組織の分離を実施したのか。その狙いとして掲げていたのは、教育組織と教員組織が一体化していることによる弊害の解消と大学院がおかれている環境変化への対応である。具体的には、①教育プログラム編成において供給ベースから需要ベースへとパラダイムシフトを図ることで教育の閉鎖性や硬直性を是正すること、②教育の柔構造化を推進することで社会や時代のニーズに迅速に対応すること、③研究組織の編成の機動性を高めることで社会的緊急性・重要性の高い研究を一層推進すること、④人的資源を最大化することで財政的制約下においても教育の質の向上と研究の活性化を図ること、⑤教員の活動を多元化することで教員の資質を最大限に活かす職務分担を実現すること、⑥人員削減や規模縮小等、今後予測されるリスクマネジメントに対応することが企図されていた。とりわけ期待されていたのは、教育の柔構造化と人的資源の最大化である。教員が組織の枠にとらわれることなく、教員組織から教育組織へと出向いていくというイメージのもと、組織の効率化と多様性への対応が目指されていたのだ。イノベーション創出拠点としての第四の組織「総合科学系」イノベーション創出拠点としての第四の組織「総合科学系」リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015特集 変革のドライブとなる組織運営改革図1 高知大学の教員組織人文社会科学系人文社会科学部門教育学部門自然科学系理学部門農学部門医療学系基礎医学部門連携医学部門臨床医学部門医学教育部門看護学部門教育研究部人文学部教育学部理学部医学部農学部地域協働学部学部保健管理センターセンター大学教育創造センターアドミッションセンター学生総合支援センター教師教育センター総合研究センター地域連携推進センター国際連携推進センター総合情報センター海洋コア総合研究センター人文社会科学専攻大学院教育学専攻理学専攻医科学専攻看護学専攻農学専攻応用自然科学専攻医学専攻黒潮圏総合科学専攻修士課程博士課程総合人間自然科学研究科教育の担当教育の担当業務の担当学長※朱文字は、教員の所属を示す。総合科学系黒潮圏科学部門地域協働教育学部門生命環境医学部門複合領域科学部門研究拠点

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