カレッジマネジメント192号
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25あり方として、ひとつのモデルを示すものだろう。「地域志向型教育」の全学的展開は、教育プログラムの中身にも及ぶ。全ての学部で、教育に「地域」の視点を導入するという方針を掲げたのである。初年次科目「課題探究実践セミナー」の必修化等により全学部に地域協働的な活動やそれを通じた教育を義務づけたことは、その取り組みのひとつである。「高知」色を打ち出すことで、高知大学の教育を唯一無二のものとしようとする構想、さらに、それを学際的に展開していく手法は興味深い。振り返ってみると、高知大学は、これまで、地域に根差した学際的、文理統合的な教育と研究のあり方を様々な形で探ってきた。「黒潮圏」を文理統合的に教育・研究する独立研究科として2004年に発足した「黒潮圏海洋科学研究科」(現「総合人間自然科学研究科黒潮圏総合科学専攻」)や、学部・学科等から独立して学際的な学びを展開する「土佐さきがけプログラム」(2012年)、そして、新たに設置された「地域協働学部」(2015年)。いずれも「特区」的に展開されてきた試みは、新たな学部の創設、そして、全ての教育に「地域」の視点を導入するという全学的方針のもとで、大学の諸活動の中枢に位置づけられたように見える。地域性と学際性。今日、多くの大学、とりわけ地方国立大学において強く意識されているテーマである。高知大学の強みは、こうした方向性を真摯に追求してきた姿勢にあるといっても過言ではない。社会環境変化に対応した改革を大胆かつ迅速に教育組織と教員組織の分離によって生まれた「地域協働教育学部門」。そこが母体となって生まれた「地域協働学部」。さらに、その設置を起点として進める全学的な組織改編。辻田副学長は、「(教育組織と教員組織の分離によって生まれた)新しい組織が変革のドライブとなったことは確かです」と述懐する一方で、「分離は言わば手段であり方法論。大学の指導部や構成員が学生の変化や社会のニーズに真摯に向き合い、それらに対応する教育改革や組織改革をいかに迅速かつ効果的に実現するかが大事」と指摘する。何のために組織改編を行い、そしてそれをどう活用するか。それは、組織の分離を実施した大学の多くが、改革後も継続して検討し続けている問いでもある。高知大学でも「まだそのメリットを活かしきれているとは言い難い」(脇口学長)という認識を示すが、その取り組みが、組織改革とその活用方策としてひとつの興味深いモデルを提示していることも事実だ。「やらなければ高知大学の生き残りはかけられない」。学長就任当初から強い決意をもって組織改革を進めてきたという脇口学長。大学を取り巻く環境が厳しさを増す中で、大胆な改革に挑む高知大学の今後の取り組みが注目される。リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015(渡邊あや 津田塾大学 学芸学部 国際関係学科 准教授)特集 変革のドライブとなる組織運営改革図2 高知大学教育組織改革実行プラン(2013年6月18日役員会決定) 一部抜粋教育組織の再編成を見据えたプロジェクト (2014年度~2016年度)高知大学は、地域の要請に応え、地域課題に真摯に取り組む大学へ進化する。大学のガバナンス・機能強化を図るとともに、地域再生の核となる人材と我が国及び世界の課題に応えるグローバル人材の育成を目指し、地域協働学部(仮称)の設置と全学一斉改組を実行する。期待される効果課題先進県といわれる高知県において、地域再生の核となる人材や我が国及び世界の課題に応える人材を育成し社会に輩出することで、今後の地方国立大学のモデルとなる改組の目的①本学の3つのミッション(「総合的教養教育」、「幅広い専門職業人の育成」、「地域貢献」)を教育組織として実体化・具現化②地域の大学として相応しい組織、高知県になくてはならない大学への再構築③学生のニーズや実態を捉えなおし、それを踏まえた大学教育を展開改組の必要性①大学のユニバーサル化②今日的な人材育成に対する要請への対応③地方国立大学としての役割と機能強化<社会的要請>・大学改革実行プラン・国立大学の機能強化に向けての考え方・教育再生実行会議第三次提言 等課題先進県高知:少子高齢化、中山間地域の疲弊、南海地震対策、産業振興など高知大学の強み:海洋コア総合研究センター(海底資源開発等)、防災・減災学生定員・教員数の再配分:改革に当たり学長預かりとした20%の学生定員・教員数(教員ポイント)の再配分を計画に即して実施改組の基本方針 (1)地域の大学として「地域の人材」及び「グローバル人材」を育成(2)「総合的教養教育」の充実により社会人として必要な能力の獲得を実現(3)組織運営のシステム改革【①〜③まで実施済】①教育組織と分離した教員組織(学系・部門)体制を導入 複数の候補者の推薦を受けて学長が面接を経たうえで学系長を決定②人事考課に資する教員評価制度の導入③教員人事は、部局のみに依らず全学的な審議・審査体制の導入④PDCA サイクルを改善するための常設外部委員会の設置基本構想(1)地域の再生と発展の「核となる人材」を育成する新教育組織(2)農学部・理学部の再編を通じた海洋資源系の新教育組織(3)理学部・農学部の再編を通じて防災工学系の新教育組織(4)教員養成機能を充実・向上させるため、教員養成に特化した教育学部に改組(5)グローバル社会に対応できる人材育成と人文社会科学に関する地域の知の拠点(6)医学部の医師・看護師養成機能を維持・充実(7)学際的・総合的人材育成を目指す「土佐さきがけプログラム」の検証・充実(8)「総合的教養教育」の実現に向けた共通教育実施機構・総合教育センターの改革(9)学部改組に連動した大学院の改革地域協働学部(仮称)の設置農林水産海洋学部(仮称)への改組理工学部(仮称) への改組人文社会科学部(仮称) への改組
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