カレッジマネジメント192号
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262014年度は大学ガバナンス改革の年といわれることは間違いない。しかし、改革の歴史や課題全体から見れば、新たな出発の年と位置付けるのが適切だと思われる。学校教育法の改訂により教授会の役割や権限が変わり、学内諸規程の改訂が一律に実行され、学長選任制度や副学長の位置づけも改変された。しかし、こうした課題は突然出てきたわけではない。図1に示したように、大学ガバナンス改革は1990年代から一貫して大学改革の主要テーマであり続けた。しかも、その内容は、1998年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改善方策について」の第3章「責任ある意思決定と実行」(文科省HP)と直近の2014年「大学ガバナンス改革の推進について」(審議のまとめ)を読み比べてみると、課題も改善方向もほぼ共通していることが分かる。それは、学長のリーダーシップの確立、そのための補佐体制の整備、教授会の位置づけや運営改善、職員の役割の高度化等である。大きな違いは、今回は、教授会の役割や権限等を法令で改正することに踏み切った点にある。その背景には「教育振興基本計画」、さらには安倍政権の「日本再興計画」で大学改革を経済再生の切り札の一つと位置づけ、大学を変えるにはガバナンス改革が不可避だとして閣議決定し国策として推進したことが上げられる。この改訂はガバナンス改革の歴史で大きな意味を持つが、教授会の位置づけの法改正だけで、いきなり迅速な意思決定ができるわけでも、全学が一丸となって動くようになるわけでもない。これまでの答申等でも、トータルな改善には組織・制度改革と運営改善の総合的な取り組みが不可欠とされてきた。文科省や行政側からやれるのは法改訂で、それを生かして実際の運営の改善を行うのは、それぞれの大学しかない。各大学とも、改訂法に沿った学内規則の整備は終了した。しかし、問題はそれをどう動かし、機能させるかということだ。改革の本来の狙いや目指すところをつかみ、課題に正面から向き合って、自らの改革推進にふさわしい機動的な運営が求められる。肝心なのはこれからということだ。私大ガバナンスの類型と特性ガバナンスで常に指摘される問題点は、私が所属する私学高等教育研究所(以下私高研)の2011年調査(206大学回答)(注1)でも裏付けられている。「理事会と教授会で方針や意見の違いがたまにある」26.7%、「理事会と教授会の関係リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015ガバナンス改革の歴史と学教法改訂1995年大学審議会答申「大学運営の円滑化について」1998年「21世紀の大学像答申」(第3章:責任ある意思決定と実行)2001年「新しい国立大学法人像について」→国立大学法人法制定2003年「学校法人制度の改善方策について」→私立学校法改訂2012年「大学教育の質的転換に向けて(答申)」(教学マネジメントの確立を提起)2014年「大学ガバナンス改革の推進について」(審議のまとめ)→学校教育法改訂図1 ガバナンス改革の流れ組織・制度改革からマネジメント改革へ──改革推進にふさわしい運営システムを如何に作るか篠田道夫 桜美林大学教授 日本福祉大学学園参与

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