カレッジマネジメント192号
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27不全が課題である」も37.4%と4割近い。意見の違いがない所は選挙で学長を選んでいる比率は31%しかないが、意見の違いがある所は学長選挙型が61%を占める。やはり選挙を採用している大学は理事会との意見の対立が生まれやすいことは確かだ。「学長方針は学部に不徹底、しばしば調整がいる」29.2%、「学部教授会には直接関与できず、1学部でも反対すると事が運ばない」17%という実態は、ガバナンス改革の必要性を提示している。直近の2014年の同じく私高研の地域連携(COC)マネジメント調査(注2)でも、学長のリーダーシップの確立や迅速な意思決定は、できているという法人もある反面、トップが統括できる組織構造になっていない、補佐体制が弱い、なんでも教授会の傾向、学部の独立性が強く統制が効かない、組織が複雑で手続き重視等の問題点を指摘する法人もかなりの数に上る。私大のガバナンスは、以前から学長の選任方法によって、A理事長・学長兼任型、B学長理事会指名型、C学長選挙型の3類型に分けられてきた。2011年調査では、Aが2割弱、Bが4割強、Cが約4割という分類となる。その特性は、Aはオーナー系が多く、小規模、歴史は古い所と新しい所が半々、経営・教学の関係は良好。Bはややオーナー系が多く、中規模、新設大学が多く経営・教学の関係良好。Cは非オーナー系が多く、大規模、歴史があり、経営・教学に意見の違いありということだ(注3)。ただ、注目したいのは3類型を比べても定員充足率や就職率、中退率、消費収支差額比率等には大きな差がない点だ。つまり、トップが強く権限を持っている、また逆に、ボトムアップの民主的運営だといっても、このガバナンスの型の違いでは、平均すれば成果は変わらない。成果に直結するマネジメントとは何かでは何が成果に結びついているか。私高研「私大マネジメント」チームの調査では、まずは実効性ある中長期計画だ。これが経営・教学改善、定員確保や消費収支差額比率の向上に効果がある。実効性があるということは計画があるだけでは駄目で、図2にあるように、プラン自体が現場の実態から出発し、具体性があり、達成指標や数値目標が明確で、達成度評価を行い改善につなげるサイクル(PDCA)が機能していることが必要である。我々の過去3回の調査でも、2006年、中期計画策定率が25%の時は、計画がある大学が成果を上げていた(注4)が、2009年調査で策定率55%になると計画があっても予算や事業に具体化されていないと成果は上げられず(注5)、2012年調査で75%になると、計画があり具体化しているだけでは駄目で達成度評価まで踏み込んでいる法人が成果を上げている。2009年調査では、例えば中期計画が財政計画にリンクしている法人は帰属収支差額比率が+8.3%であるのに対し、できていない場合は-1.9%、同じく計画が予算編成に反映されている場合は+7.5%、反映されていない場合は-0.5%と明瞭な差が出ている。このようにPDCAが機能している所は政策が浸透、課題の共有が進んでおり、図3で見るように、政策浸透度は、改革推進、円滑なマネジメントの遂行など多くの面で成果に結びついている。リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015特集 変革のドライブとなる組織運営改革P(計画)計画の策定に当たっては、外部評価や大学の実態を示すデータを活用、重点を定め取捨選択。構成員との対話や提案制度があり専門的な企画部門やIR組織を設置、計画の内容を解説し情報を公開。現実を踏まえた計画を立案。D(実行)事業計画に具体化、予算編成や財務計画に連結、教育改革方針や事務局業務方針につなげる。数値目標を掲げ、部局の計画、個人目標と連動させる。期限やスケジュール、責任者を明確にするなど全構成員を動かす仕掛けあり。C(点検)A(改善)計画の達成指標やエビデンスを明確にし、毎年度、数値で到達状況をチェック・改善指導、自己評価と認証評価を結合、評価部局を機能させ、部局や個人の取組みも評価し、結果を次の改善や計画策定につなげる。図2 実効性ある中長期計画2012年、私高研中長期経営システムアンケート調査より十分浸透ある程度浸透浸透無し学生確保がうまくいくようになった 42%52%34%経費削減に成功した 67%64%56%目標が教職員に浸透、共通理解が進んだ100%89%42%中長期計画に明記された改革が実現し易くなった92%94%55%法人と大学が共通の目標に向け活動100%92%65%大学の個性や特色化が推進された92%77%47%PDCAサイクルがうまく機能するようになった67%63%25%学生満足度の向上など教育面での改善が進んだ73%71%48%各部門が中長期計画を意識した改革を行う92%83%40%図3 中長期計画浸透の効果(肯定的評価の割合)『私学高等教育研究叢書』(2013年2月)73P、両角亜希子
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