カレッジマネジメント192号
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30大学が象牙の塔と呼ばれたのはそれほど古い話ではない。社会と隔絶した場所で学問に勤しむ学者の集まりを揶揄した言葉で、今でもある種の大学はその趣を残す。しかし、現代社会の変化はあまりに急だ。とりわけ長足の進歩を遂げるICT技術は大学における経営や教育の相貌を大きく変えつつある。現代の大学には、象牙の塔を脱して新たな課題に挑む柔軟さとフットワークの軽さがどうしても必要になっている。本稿ではそんな大学の好事例を見ていきたい。今注目を集める近畿大学(以下、近大)だ。2014年度入試で初めて「志願者数全国1位」を達成して世間の耳目を集めた。それを支えた取り組みの一つがICT技術の活用だ。いかなる取り組みが、どんな効果を挙げているのだろうか。東大阪キャンパスに広報・総務部長の世耕石弘氏を訪ねた。近大は今なぜ強いのか近大は、近畿地方を中心に西日本に6つのキャンパスを展開し、学部数13、学生数3万2000名余り(大学院・短期大学部戦略的なネット化で進める、コスト削減と学生のICTリテラシー強化リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015ICTの活用による大学経営改革 ICT技術の進化や利用者のリテラシー向上を背景に、今やどの学校においてもICT化は取り組むべき経営課題となっている。ただ、ICTの導入・活用はゴールではない。本特集では、一時期に注目された「効率化」や「コスト削減」といった観点を超えて、将来に向けたマネジメント戦略としてICTの活用を進める2校に取材した。 学生との接点を次々とICT化することで「学生のITリテラシーの強化」を狙う近畿大学と、学校運営や経営の「スピード化」と研究環境の整備による「研究力向上」を図る東京理科大学。この2校の事例が全く違うように、ICT導入の目的や狙う成果は各学校によって異なるであろうが、現状の何かの置き換えや改善ではなく、新しい価値を生み出し自らを変えていけるICT戦略のヒントとして、ぜひ参考にしてほしい。──効率化やコスト削減を超えて、新しい付加価値の創造へ近畿大学CASE1第2特集

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