カレッジマネジメント192号
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31等の在籍者を含む)を誇る我が国屈指の私立総合大学だ。2012年度には帰属収支差額が全国の私立大学で1位(113億円)となり、その経営力に対する評価は極めて高い。2014年3月末現在の積立資金は約880億円だ。その財務力を梃に、2020年までに約400億円を投じる「超近大プロジェクト」の下、大規模なキャンパス整備が進行中だ。東大阪キャンパスには昨年秋に文芸学部の実習棟が完成し、今年秋には新法学部棟も竣工する。新たなタワー棟や図書館の建設も予定されている同キャンパスは今後さらに変貌を遂げるはずだ。そんなキャンパスから放たれる活力は、教育・研究活動における次なる新たな挑戦にも結実しているようだ。来年4月には、14番目の新学部として国際学部の開設が予定されている。新学部では、語学教育で知られるベルリッツコーポレーションと連携して、アカデミックな領域だけでなく、世界のビジネス分野で通用する実践的で高い語学力・コミュニケーション能力を備えた人材を輩出していく予定だ。「実学教育」を建学の精神に掲げる近大らしい学部の開設となる。教育だけに限らない。研究活動でも幅広い領域にわたって20の研究所を擁するなど、世界をリードする研究が推進されている。その代表格は、クロマグロ(いわゆる近大マグロ)の完全養殖に世界で初めて成功した水産研究所だ。ほかにも、私立大学で唯一研究・教育用原子炉を有する原子力研究所、マンモス復活プロジェクトで注目を浴びる先端技術総合研究所等、近大の存在感は増すばかりだ。18歳人口の減少とともに市場が縮減する中、一つの大学がこうして右肩上がりの勢いを維持することは並大抵のことではない。もちろん、近大の強みはまずはそのスケールメリットにある。それは確かに、小規模な単科大学が簡単に真似できるものではない。しかし、近大にはスケールだけで説明できない強みがある。時流を見定める冷静な分析と、その分析を踏まえて次に打って出る果敢な改革力だ。近く到来する「2018年問題」を乗り切るうえで機関規模に関係なく必要になるものだ。近大の強みは、一歩先を読んで具体的な戦略に変えていける未来志向型の行動力にある。出願・入学手続きを完全ネット化そんな力が遺憾なく発揮された取り組みが「エコ出願」だ。2009年からネット出願を一部導入した。ネット出願率は暫く低迷を続けたものの、2012年に「エコ出願」としてネット出願者の検定料を割引する措置を設け、ネット出願率の向上を目指した。そして2014年度入試からは完全実施に移行した。完全ネット化は日本の大学初だ。ネット出願を始めた理由は、まず何よりも環境保護のためだったと世耕氏は語る。近大は過去2年連続で志願者数日本一を記録し、その数は実に10万人を超える。これだけの志願者がいれば当然、願書も相当数に上る。従来は約13万部を作成し、そのうち3万部ほどが廃棄処分になっていたという。なるほど、それではエコとは言えない。ペーパーレスにすれば資源の無駄をなくすことができる。紙での出願をやめたことは別のメリットも生み出した。近大は現在、13学部48学科からなり、受験生は学部を超えての併願が可能だ。特に近接した学科同士の併願が可能で、例えば農学部のバイオサイエンス学科の志願者なら、生物理工学部遺伝子工学科との併願が可能だし、建築学部志望なら広島キャンパスの工学部建築学科や福岡キャンパスの産業理工学部建築・デザイン学科に併願可能だ。ただそうなると、受験生の出願手続きは一気に複雑化する。ネット化はこの受験生側の出願作業を単純化するのに最適で、そリクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015図表1 「近大エコ出願」を伝える広告髙木純平総合情報システム部牛島 裕 総合情報システム部 事務長世耕石弘広報・総務部長
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