カレッジマネジメント192号
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32れが志願者増の一因にもなっていると世耕氏は分析する。それはさらに、事務作業の軽減にもつながった。近年の急速な志願者増は事務手続きの増加と煩雑さを伴っていた。その膨大な事務作業の一部は外注化し、短期集中で手打ちによるデータ化を行う必要があった。加えて、願書の記載内容に不備がある場合は受験生を追いかけて対処するという丁寧な対応ぶりで、そうなると事務作業はさらに膨れ上がる。出願手続きの完全ネット化はそんなコストや作業量の削減をもたらした。約3000万円の経費削減ができたと世耕氏は言う。しかも、単なる経費の問題にとどまらなかった。従来必要だった作業が減り、職員が別の業務に注力する余裕につながったというからまさに好循環だ。ネット化について「今のところデメリットはほとんど見られない」と世耕氏は語る。むしろメリットのほうが大きいという。その一つは、ネット出願で受験生全員のメールアドレスが確実に把握できる体制が整ったことだ。結果として、合格発表前日の夜8時に合否結果を一斉開示することができるようになった。ネットで合否確認し、少しでも早く親子で入学先の大学について相談してもらうことが可能になったというわけだ。もう一つ、危機管理上のメリットもある。真冬の入試シーズンには、雪で試験開始が遅れることもしばしば生じる。そんなとき受験生のメールアドレスが把握できていれば、一斉配信で試験開始の遅延を知らせることが可能だ。実際、今年度入試で、列車事故で試験開始が遅れるという事態が発生したが、メールでの一斉通知で難なく乗り切ることができたと世耕氏はふり返る。ネット出願の経験を踏まえ、近大は2015年度入学者から入学手続きもネット化する試みに踏み切った。課題となったのは誓約書だ。入学手続きに際して入学予定者から誓約書を提出してもらうが、その際、自筆のサインを求めるのが慣例だった。この部分をネット化することへの反対もあったが、最終的には誓約書をネットの同意ボタンに変えた。大学規則をPDF化して提示し、クリックで同意を意思表示してもらうという仕組みだ。この結果、個人情報を管理する手間が削減でき、書類チェックに係る業務省力化につながった。その分、職員は奨学金に関する相談業務といった実質的な仕事に時間が割けるようになったという。キャンパスライフでも進むネット活用近大におけるネット化の取り組みにはまだ先がある。図表2にある通り、入学後の学生生活でも積極的なネット活用が推進されている。その一つが教務システムの充実だ。学生が学業を成功に導くには情報管理が不可欠なスキルの一つだ。授業の時間割、レポートの提出締め切り、成績やシラバスの確認等々、常に情報を把握し的確に管理していることが求められる。特に、授業当日の休講や教室変更といった突発的な事態に対応する際にはタイムリーな情報把握がものをいう。近大では、学生に必要な情報は、学生ポータルシステムである通称「近大UNIPA(ユニパ)」で一括管理されている。PCでのアクセスももちろん可能だが、今やスマホの時代。近大では新入生のスマホ利用率が年々上昇し、2014年度調査では95.2%に達している。2013年11月から近大UNIPAのスマホ対応を開始したが、2014年後期にはスマホによるアクセスがPCを逆転するようになったという。学生は、履修登録から、授業出欠状況の確認、休講・補講等の情報取得、シラバス照会、アンケート回答に至るまで手許のスマホで済ませるようになっている(図表3)。リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015図表2 近大が進める手続きの完全ネット化(入学前後)【合格発表】●ネット出願 平成26年度入試より紙の願書を廃止、出願は全てネットから(近大エコ出願)●ネット出願時にメールアドレスを登録しておくため、交通機関の乱れ等による試験時間変更などの連絡も受験生に直接届く●従来の方法(郵送)に加え、ネット出願時の登録番号から合否を照会することが可能に ※ネットでは合格発表前日の晩から照会可能【出願〜受験】入学前【入学手続き】●平成27年度入学生より、入学手続きの完全ネット化→電子版誓約書にサインをしてもらう形式【履修登録】●学内教務システム(近大UNIPA)を通じてシラバスの確認および履修登録を行う ※休講・補講情報の通知、課題配信等にも使用【教科書販売】●Amazon Studentへの入会後、近大UNIPAのシラバスに記載しているISBNコードからアマゾンサイトへ遷移入学後

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