カレッジマネジメント192号
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35プで改革を、とはなかなかなりません。従って、財務系システムの改革はいわば事務サイドの改革のため、教員からの大きな反対はなく進めることができますし、またある程度のトップダウンによる全学的な改革が必要なのです」と語った。ICT化の道程全学のICT化は2013年度より開始された(図表1)。まず、2013年4月には職員のメールシステムをOce365にした。Oce365とはマイクロソフト社のOceを中心にしたクラウド版グループウェアであり、その後、2014年4月には学生や教員を含む全学に拡大され、さらに卒業生に対しても無償提供されている。2013年7月には、現状のシステムの見直しがはじまった。特に財務・会計・人事に関するシステムを、これまでの使い慣れたシステムにパッチを当てて更新するか、あるいは、全く新しいシステムにして思い切った改革を行うか、それが効率化をめぐる最大の検討課題であった。議論を重ねた結果、11月には従来のシステムの更新ではなく、SAP社のシステムを新たに導入することを決定した。この財務システムが本格稼働を始めたのは2015年4月である。本格的稼働までに2年弱を掛けてきたのは、よくある大学用にカスタマイズするためではなかった。半谷理事によれば、「新システムの導入にあたって、大学用にカスタマイズすることは止めることにしました。というのは、カスタマイズすると、本体のバージョンアップによってカスタマイズした部分の見直しが必要となり、その度ごとに億単位の費用が必要になります。費用の無駄を省くという点でも、効率化を図ろうとしたのです。他方で、カスタマイズしないことによる使いにくさというデメリットをどのように解決していくか、この問題の解決にこれだけの時間が掛かったのです」ということであった。電子決裁システム財務システムの見直しが時間を掛けて検討されるなか、他方で、早々に決定したのは電子決裁システム(FASE)の導入である。民間企業では当たり前のように導入されている仕組みであるが、大学では、まだまだ稟議書を持って各部署を回るのが普通である。しかし、職階に従って順番に稟議書に捺印することの非効率性を指摘する声は、従来からあがっていた。そこで、2013年10月には全てを電子決裁とすることにし、承認者にはiPadが支給され、pdf形式の書類に電子印のボタンを押すことで、掛かる時間を短縮しようとした。見かけは従来の書類形式がpdfになっており、違和感は何もない。この効果は大きかった。それまでは、稟議書の申請から承認完了までに平均72時間/件掛かっていたのに対し、FASE導入後は平均38時間/件にまで短縮し、意思決定に掛かる時間は半分にまでなったのである。この時間効果は誰の眼にも明らかである。導入当初は、誰が電子印を押すのが遅いか統計をとり、それをリスト化して公表するなどして、時間短縮を促したという。こうして、出張など外出先へもiPadを持参して決裁印を押すという行為は、日常になったそうだ。加えて、投資利益率も向上したことを指摘したい。導入から3〜4か月経過した2014年1月末で既に104.3%となっており、1年間で215.6%、3年間で355.3%が見込まれている。電子決裁システムにより、稟議書の受け渡し時間がゼロになったことが最大のコスト削減利益である。カードで研究費使用もう一方の新財務システムの導入によって、目に見えて変化するのは、教員の研究費の使用方法である。教員が研究費によって、どの業者からどのような物品を購入しているか、過去にさかのぼって使用状況を調査すると、物品の30%は大学リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 20152012年12月中根滋理事長就任2013年4月職員メールシステムOce365稼働開始(職員先行導入)2013年7月現状のシステム見直し検討2013年10月電子決裁システム(FASE)の稼働開始、決裁承認者へのiPad支給新学籍システム(SIS)の検討2013年11月新財務システム、SAPの導入決定2014年4月全学メールシステムOce365稼働開始(学生・教員・卒業生)2014年9月全キャンパス無線LAN化2015年4月財務システム(SAP)稼働開始VRE(eTUS Research)稼働開始VLE(①学生ポータルeTUS Portal、②学修ポートフォリオLETUS++、③就職支援システムTUS Unicareer)稼働開始2017年4月新学籍システム(SIS)稼働予定図表1 ICT化への年表ICTの活用による大学経営改革

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