カレッジマネジメント192号
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36生協を通じて購入されていることが明らかになった。これまでは紙版の伝票によって処理していた事務作業をICT化すれば、効率化は著しい。もう少し、具体的に述べよう。教員は、生協で使用できるバーコードカードを渡され、それで物品を購入する。バーコードカードの情報は大学事務に自動連携して、いつ、誰が、どのような物品を購入したかというデータとなってSAPによって処理される。これによって研究費の使用状況の全学的な把握が極めて容易になる。また、大学としては、研究費の不正使用を最も恐れており、そうしたことを防止し、透明性の高い予算処理のためにも、新システムは効果を発揮することが期待されている。また教員は、自分の研究費をどのように使用したのかについてVRE(Virtual Research Environment)というシステムを通じて確認できる。教員にとっても、物品の購入がバーコードカード1枚で完了し、かつ、自分の研究費の予算管理の効率化が図られるという仕組みである。まだ、学内研究費に限っての使用であり、科研費等の外部の研究費には適用されていない。また、物品購入以外の使用、例えば、学生アルバイトの謝金、学会の大会参加費の立替等には適用されていない。この新システムによって、こうした部分での研究費使用に関しても効率化を図ることができるか否かが、今後の課題とされている。VREで研究生産性の向上このVREは、実は教員の予算管理システムとしてのみ機能しているわけではない。Virtual Research Environmentという名称の通り、教員の研究に関するコラボレーション環境をICTの利用によって効率化し、ひいては研究成果の向上につなげていくことが目的である。図表2にあるように、研究費の予実把握はその1つであるが、それ以外に研究業績のシステム上での集約により、どの教員がどのような研究をしているのかを容易に調べることができ、研究コミュニティーの広がりや、部門を超えたコミュニケーションが生起することで、研究の革新が期待されるのである。VREは、東京理科大学の中長期計画に従って導入されたシステムであり、2019年には「世界の理科大」になることを目指した取り組みの一環なのである。とかく、日本の私立大学は学部学生の数に依存することで経営の安定化を図ろうとする。しかし、東京理科大学の場合、今後の少子化の中で、そうした体質からの脱却を図り、むしろ研究力で身を立てていく道を選択しており、そのために大学院を拡充し研究大学としての地歩を固めようとしている。研究成果を大学発ベンチャーとし、そのリターンでもって財務基盤の充実を図ることも計画している。そのためにも、ICTによって研究環境を整備し、教員がより効率的に研究に取り組める仕組みを作っておかねばならないのだと、半谷理事は説明されるのである。課題は学籍システムの改革大学の中長期計画をもとに、インフラ整備としてICTの導入を進めていくのであれば、必然的に、学務面でもICTによる効率化が求められる。特に学籍に関してはどの大学もICT化を進めているが、学部ごとに異なるシステムを導入していたり、授業関連情報とそれ以外の学生生活情報が統一されていなかったりと、それこそシステムのカスタマイズがリクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015図表2 VRE構築プロジェクトの全体像VRE取り組みの全体像 グローバル化した、イノベーションを促進する研究コラボレーション環境となる、新システムVREの構築 ① 研究業績の集約 ② 研究費の予実把握 ③ 部門を超えたコミュニケーション ④ クラウド型のファイル共有 ■従来の環境単なるインフラ環境・理科大の研究環境と言えば、ネットワークのことを指す。・研究情報はPC上にあり、ファイルの共有は困難。・研究者間のコミュニケーションは基本的にメール。・研究を強力にサポートするツールがない。■目指す姿 グローバルベストプラクティスの取り込み ・ベストプラクティス活用による研究業務の効率化 ・国内外の研究者が連携し、協働できる環境を実現 位置づけ ・ 全ての活動は中長期計画の達成に帰結 ・ 特に研究コラボレーション環境の整備とグローバル展開を意識 本取り組み 研究のパイプライン管理 (研究費の予実把握等) 世界の理科大 ~世界で最も魅力のある大学~ 世界で認められる教育力・研究力を 持ったグローバルな大学の実現 研究コラボレーション環境 (研究の効率向上) グローバル展開 2019

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