カレッジマネジメント192号
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41リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015ブが生じるような学習の内容と環境を、一つの体系に統合、パッケージ化しています」(尾家祐二副学長)そのパッケージは、コンピテンシー(Competency)、それを修得するための教育プログラム(Circuit Program)、それを育む環境であるラーニングコンプレックス(Learning Complex)からなり、「3つのC」と名づけられている。教育プログラムの構築に当たっては、「大学だけの力で『創造する個』や『グローバル人材』を育てられる時代ではない」(松永学長)ということが強く意識された。工学系の教育では必須となる産業界との協働・連携については例えば、北九州市立大学、早稲田大学との3大学連携大学院でインテリジェントカー・ロボティクスというコースを開設した。「自動車メーカーの方々にプログラム、カリキュラムにコミットして頂き、学生の指導まで関わって頂いています。こういう教育は企業の方の協力がないとできないものですが、大学にもメリットがありますし、企業にも、彼らが欲しい人材を育てるというメリットがきちっとある。そういうプログラムを増やすことは、学長からも指示を受けています」(尾家副学長)グローバル人材の育成についても、海外との関係をどうするかを本気で考えた。「特に若者が海外に出たがらないといわれるなかでどうすればいいか、様々な議論を経て、2013年4月に海外教育研究拠点MSSCをマレーシアに開設するなど、いくつかのプロジェクトを実行していきました。その成果として、2014年度は120名程度の学生がマレーシアへ、400名を超す学生が海外に行きました」(松永学長)そのほかカリキュラム全体を通じて、PBLやチーム学習を増やす方向性を持っている。そのための環境として、ミライズ(MILAiS)と呼ぶインタラクティブ教室を2011年から運用開始。授業内でチームディスカッションなどがしやすい設計の教室群で、当初は飯塚キャンパス1箇所のみだったが、戸畑キャンパスにも整備を進めている。複合的学習環境=ラーニングコンプレックスとしてはこのほか、附属図書館に2011年、附属図書館分館に2013年に整備したラーニングコモンズ、学習だけでなく、発表の場、交流の場としても活用できる空間として2014年には飯塚キャンパスに「ラーニングアゴラ棟」を開設。工学系ならではの環境として、ものづくりのための「デザイン工房」も飯塚キャンパスを皮切りに戸畑キャンパスにも「未来型インタラクティブ教育棟」内に設置されるという。学生寮の「明専寮」は、一時廃止されていたが2013年度に再出発。留学生と日本人学生が1戸3室をルームシェアするスタイルの混住寮(スチューデント・レジデンス)も、改修を経て、飯塚キャンパスで2011年度から運用を開始。今年中(2015年)には戸畑キャンパスに混住型研修施設「国際研修館」を設置する。ルーブリックの積極活用九州工業大学のこの教育改革では、ルーブリックを積極的に取り入れている。コンピテンシーの各要素に対して、各授業やPBL、海外派遣プログラムやインターンシップまで多くの教育プログラムにルーブリックが作成され、それに沿って、学生が自己評価したり、チームでの学習やプロジェクトではメンバー同士で評価したりと活用している。「学生を評価する際に教員が使うこともありますが、本学では、学生が自己評価を深化させるツールとしての機能にも着目しています」(尾家副学長)図表1 グローバルエンジニアの養成Global Competency for EngineerX on Campus学習教育拠点・未来型インタラクティブ教育棟・国際研修館・インタラクティブ学習棟(MILAiS)・デザイン工房・ランゲッジ・ラウンジ・グローバルコミュニケーションラウンジLearning Complex複合的学習環境・多様な学習の創出・アクティブ・ラーニング型教室、工房・海外拠点・混住寮、滞在施設 等Campus on X海外教育研究拠点・マレーシア※設置済・アメリカ・台湾Circuit Program教育プログラム及び教育制度を整備●6年一貫教育、クォーター制の導入 ●海外派遣プログラムの拡充 ●事前・事後学習のプログラム化1.多様な文化の受容2.コミュニケーション力3.自律的学習力4.課題発見・解決力5.デザイン力Global Competencyfor Engineerグローバル教養教育語学教育StudyAbroad留学生との協働学習WorkAbroad
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