カレッジマネジメント192号
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42リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015各種ルーブリックは、教育改革の成果を示すデータにもなっているという。「学生にとってのプラスの効果はルーブリックで検証できていますが、そこには出ない成果として、学生達がアクティブに、元気になっているという実感があります。例えばマレーシアでの海外インターンシップ、消極的な本学の学生がどれだけ行きたがるかと心配していたのですが、12名の募集に対して20名以上の応募がありました。手を上げるという段階で、学生の気質が変わってきていることを感じます」(松永学長)「考えが変わる、態度が変わる、行動が変わる。そういう学習効果が見えてきています。1年生の夏休みに、海外で現地の学生さんと一緒に学ぶプログラムがあります。正直言って本学の学生の英語レベルはそれほど高くないのですが、そんな学生でもよい刺激を受けて帰ってきて、その後自ら別のところに応募して、また海外に行ったりしています」(尾家副学長)海外体験以外でも、学生が自律性を高めている事例が様々に見られるようになってきているという。改革を推進する意思決定の仕組み現在、教育改革の中心になっているのは2014年度に設置された「教育高度化推進機構」だ。その設置前は、「教育企画室」(2010年度設置)が文字どおり企画を担当、「学習教育センター」(2011年度設置)がその企画の実施部隊として機能してきた。「企画に対してトップダウン的に学長からの指示が直接反映されること、実施がスムーズにいくことを考慮して、従来の2つの組織が機構の中に入る形で再編しました。学外と結びつけるために、企業の人事部の方による『産学連携教育審議会』という外部組織も設置しました」(尾家副学長)この機構では、3部局長、教育企画室長、学習教育センター長、尾家副学長の計6名からなる「機構運営会議」が、学長からの諮問を受け、答申を上げる。特徴的なのは、各部局長が入っている会議なので、ここで決めた答申に学長からGOが出れば、各部局の教授会で再び議論することはなく、すぐに実施となることだ。「ただし現場では、すぐにできることもあればできないこともあるので、これは今年度4月から、案件ごとに2、3年の期間をかけて検討するなどのスケジュールも立てていきます」(尾家副学長)教育に対して熱心な教員が多かったため、改革の実行はさほど困難ではなかったと学長は言う。「3つあるどのキャンパスでも、私が思った以上にすんなり受け入れてくれたなあというのはありますね。もちろん当然、全員がすぐに一つにまとまるということではないですよ」(松永学長)「世の中が変わるときに、1割が変われば全体が変わるとか言われていますが、本学の場合も、1割ぐらいの先生が本当に積極的で、その周辺に、半分以上の先生方が続いているんだろうと思います」(尾家副学長)課題は質保証と変化への対応今後の課題について尾家副学長は、教育の現場レベルで「質の保証の仕掛けを検討する必要があると思っています」と話す。「産学連携教育審議会で、大学の教育の質保証が話題になりました。学生の自己評価と教員のつけた成績が乖離しているようなことはないか。企業人事の人から見た評価とのギャップはないか。また、学生個人レベルの成長だけでなく、学科全体、学部全体、あるいは全学で、例えばグローバル・コンピテンシーがどういうふうに育っているのか。そういった質保証のための情報収集を、今後しようとしているのです」(尾家副学長)松永学長が感じているのは、工学系特有の、さらにはより普遍的に大学としての課題だ。「時代が変わっていくなかでもやっていける技術者を作るという目標を立ててはいますけれども、時代のその変化を大学が的確に捉えられるか、今は自信がありません。さらに難しいのは、技術が3年で変わっていくとすると、入学した学生が卒業する時点で変わっているわけで、現状把握だけでなく未来予測の能力も求められる。これはもう、大学だけではとても考えられない。大学全体の教育を議論する場として産学連携教育審議会を作りましたけれど、本当はそれぞれの専門性ごとにそういう外部組織が要るだろうと思っています。それと、これから大学は、卒業生や企業から寄付をもらわないとやっていけなくなります。そうすると卒業生が振り返って『あの大学を卒業してよかったなあ』という大学にならない限り、お金は集まってこないんですよね。そうすると新しい教育にも対応できない。意欲の高い学生が入ってこなくなれば、われわれの育て甲斐もない。人のサイクルが滞ります。ここの人とお金のサイクルを本気で考えることが、大学の課題だし悩みだと思います」(松永学長)(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)就業力を育成する

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