カレッジマネジメント192号
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57【図表2】のAを見ていただければ分かるように、大学進学者に占める「その他」の比率は、全体では2.4%と必ずしも大きくない。県別に見ると大分の12.0%が突出しているが、これは、県内に留学生を多く抱える立命館アジア太平洋大学等が存在することの影響が大きいと想定される。それ以外に「その他」比率が高いのは、山口の5.0%、鹿児島・三重・福岡が3%台の後半となっている。この「その他」の影響を抜いて2025年の大学入学者減少率を算出したのがB列となるが、ここでも、前回試算との差分(D)が大きいのは前述の5県で、最も影響が大きかった大分県の大学入学者減少率は、22.8%から12.2%と10ポイント近く低くなっている。それ以外の県に関しては3-5ポイントの差分となった。もう一つの【図表3】を見てみよう。この表は、自県出身者の減少率を横軸に(①)、他県出身者の減少率を縦軸に(②)とり、どちらの要因が大きいのかを見たものだ。2軸の数値が同じになる部分で領域を2分割すると、右下の領域が、自県出身者減少率が他県出身者の減少率を上回る都道府県であり(30県)、左上の領域はその逆となる(16県)。前回、「その他」を含む状態で②他県出身者の減少率が高く出ていた前述の5県に関しては軒並み縦軸の位置が下に移動し、特に大分県は他県からの流入よりも、自県出身者の減少の影響が大きい右下のエリアに移動している。ただし全体的な傾向としては、前回レポートから大きな変化は見られない。自県出身者の減少率が他県からのそれを上回る右下の領域(ブルー)には、大都市圏は1つも含まれておらず、比較的人口規模の小さい県が多い。18歳人口の減少率が高く自県のマーケットそのものが縮小しているため、近隣を含む他県からの入学者をどのように確保していくかという戦略が必要となるエリアだ。一方、左上の領域(ピンク)には大都市圏が含まれているのが特徴で、数値的にも自県よりも他県からの入学者の減少が大きい。右下の領域とは異なり、全体的に18歳人口の減少率は低い。この領域に関しては、自県のマーケットもまだ残存するため、まずは地元からの入学者を確保したうえで他県からの流入も獲得していくという優先順位となるだろう。このように、一言で大学入学者数の確保といえども、各都道府県ごとに課題と対策は異なる。改めてデータをご参照のうえ、ぜひマーケット戦略に活用頂きたい。5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 (%) (%) 0.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 -5.0 北海道 青森 秋田 岩手 長崎 鹿児島 新潟 山梨 和歌山 長野 愛媛 三重 鳥取 京都 大阪 岡山 広島 山口 香川 石川 宮城 福岡 神奈川 東京 埼玉 千葉 栃木 兵庫 大分 沖縄 滋賀 群馬 熊本 茨城 福井 奈良 富山 宮崎 徳島 高知 佐賀 山形 福島 静岡 岐阜 島根 愛知 北海道 東北 北関東 南関東(首都圏) 甲信越 北陸 東海 関西 中国 四国 九州・沖縄 他県出身者減少率 > 自県出身者減少率 全国平均7.5 全国平均9.3 ①自都道府県出身者の減少率が高い ②他都道府県出身者の減少率が高い 地元からの入学者確保が 大切な都道府県 他県出身者減少率 < 自県出身者減少率 地元だけでは 厳しい都道府県 図表3 都道府県別 大学入学者減少率(自都道府県高校出身者と他都道府県高校出身者の割合)「その他」比率が高いのは、大分、山口、鹿児島、三重、福岡リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015減少要因により、打ち手の優先順位は異なる
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