カレッジマネジメント192号
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60リクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015部課長の意識と運営能力が生産性向上の鍵次に、職員組織における職場レベルの問題として部や課の運営について考えてみたい。ここでは、部長や課長がどれほど強く生産性を意識し、日々の運営の中で実践できるかが鍵となる。生産性の観点から部課長層の役割を考えると、その第一は、個々人の生産性が高まるように、人材育成の環境を整えることであろう。特に課長は、配下の職員に期待する役割と能力を見極めたうえで、仕事の与え方を工夫し、先輩・同僚による支援・助言に目配りし、研修の機会を与える等、学習を通した成長を後押しする必要がある。優れた経営であると世界が賞賛する企業に共通する要素の一つが、人材育成の重視である。シニアマネジャー以上の最大の役目の一つが人材育成と言い切る企業もある。第二に、組織として、仕事の優先順位を明確にし、力の注ぎ方に強弱をつけ、ムダな仕事を減らしていかなければならない。特に課長は、計画的な業務遂行を徹底し、上手に段取りをつけ、配下の職員が手戻りなく、円滑に仕事が運ぶように気を配る必要がある。部課長自身が、仕事の目的、内容、重要性を十分に理解するとともに、効果的に運営できる能力を身につけておくことが前提となる。部下から見た上司の有能さが試されることにもなる。第三は、仕事の適切な配分と職員間の連携・協力の促進である。同じ部内でも課ごとに忙しさが異なったり、課内でも特定の職員だけが常に長時間残業を強いられたりという状況は、どの大学でも程度の差こそあれ生じているものと思われる。また、大学の場合、時期によって業務量が大きく変動するという特質も抱えている。人員に余裕があれば、相互に補い合うことができるが、次々に新たな業務が加わり、業務量も増加する一方で、人員の抑制や削減が続くと、特定の仕事を一人で担当するケースが増え、量的にも質的にも協力し合うことが難しくなる。課長は、配下の職員の業務実態を的確に把握し、負荷バランスを考慮しながら仕事を配分しなければならず、部長は、課を超えた職務分担の組み替えや連携・協力の促進にこれまで以上に気を配る必要がある。第四は、動機づけである。効率的かつ円滑に仕事が進む状態は働く者側にとっても望ましいはずだが、仕事の仕方を変えることの煩わしさや心理的抵抗もあって、改善が進まないことが多い。キャリア意識や仕事に対する姿勢が職員間で異なることが、職場全体での改善活動を困難にしている面もある。一人ひとりが自発的に改善を重ね、組織全体としても協力して改善に取り組むという方向に、職員をどう動機づけるか。そのためには、身の回りの小さな改善を通じて、仕事を変えるとはどういうことかを実際に体験させるとともに、改善することが、組織のみならず、個人にとっても望ましい効果をもたらすことを実感させる必要がある。ゆとりある働き方をしたい、残業を減らしたい、学生に接する時間を増やしたい、より創造的な仕事に注力したい等、個人が望ましいと考える働き方や仕事の仕方を理解し、その実現を後押しする形で改善を促すことが重要である。そうすることで自発的に改善に取り組む姿勢が生まれ、徐々に定着していくものと思われる。生産性向上のための部課長の役割について、4つのポイントを述べてきた。現状からするといずれも高いハードルかもしれないが、この方向で部課長を育てることが大学業務の足腰を鍛え、生産性向上につながるものと考えている。大学全体で「よりよく考える」ことを習慣づける第三の要点として、生産性向上のために、大学(全学)のレベルで何を為すべきか考えてみたい。まず、学術の中心である大学において生産性向上がなぜ必要なのかを明らかにする必要がある。その理由は冒頭に述べた通りであるが、そのこと自体、教育研究の本質に抵触するものではなく、自由の基層としての時間と精神のゆとりを生み出していくために不可欠な取り組みであること、生産性向上は組織のみならず個人にも望ましい効果をもたらすこと等を筋道立てて説明することが大切である。

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