カレッジマネジメント192号
6/66

国立教育政策研究所は文部科学省所轄の国立研究機関として、世に広く知られているPISA、PIACCといった国際調査のほか、国の政策形成やその効果検証等に資することを目的として、年間十数本のプロジェクト研究を走らせている。その中で、高等教育研究部が担当する「大学の組織運営改革と教職員の在り方に関する研究」(平成26年度~27年度)においては、現在各大学において急速に展開されている大学改革において、今後、学位プログラムを中心とした教育システムの構築のためには避けては通れないであろう教育組織と教員組織(研究組織)の見直し(分離問題)を今年度の中心的な調査研究対象とし、方法的には、その改革プロセスのダイナミクスを丁寧な聞き取り調査を実施して、組織分離改革に踏み切った各大学のそれぞれ個別の文脈や共通する要素等の集約と整理分析に努めてきた。つまり、従来の量的な調査や制度研究と異なったアプローチを採用して、リアリティを伴った大学改革の「現場」の実相に迫ろうとする調査研究を進めてきたのである。周知のように、教授会の役割の明確化や副学長、監事の機能強化等、学長のリーダーシップの確立を主な狙いとする「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」が昨年6月に成立し、本年4月より施行されている。このガバナンス改革は、遅々として進まない大学改革(本研究の扱ってきた大学組織の改革問題もその重要なトピックである)の原因の一つとして、「教授会自治」に代表されるような伝統的な意思決定のあり方にあると捉え、時代や社会の変化に応じた改革を、スピーディーに実施することを求めて、その抜本的な改革を目指したものである。この制度改正は、戦後長らく続いてきた大学における、教授会自治を基盤とする「大学の自治」に根本的な変容を迫るものとして、その是非をめぐって大きな議論を呼んできた。また、「大学の自治」を侵害するものとしての批判はもとより、実際の運用面における多様な実態を尊重すべしとの声も根強い。しかし、制度としての大学が、その役割、機能も含めて、大きな転換点を迎えている大学組織改革のダイナミズムに何を見出すのかリクルート カレッジマネジメント192 / May - Jun. 2015国立教育政策研究所「大学の組織運営改革と教職員の在り方に関する研究」中間報告川島啓二九州大学 基幹教育院 教授(前 国立教育政策研究所 高等教育研究部長)「大学の組織運営改革と教職員の在り方に関する研究」ガバナンス改革は、大学改革の切り札となり得るか?

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です