カレマネ
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15リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015「2025年の「働く」は、まだ決まっていない」と、冒頭に述べた。裏返せば、これは、「これからの10年をどう過ごすかで、未来は変わる」ということでもある。2025年にかけては、これまで同様の前提を維持できても、社会は緩やかに活力を失っていく。現実にはそこに、少子高齢化やグローバル化などにともなう様々な社会システムの機能不全が下方圧力として加わる。そのため、衰退した未来の到来が強く危惧されるのが2025年だ。この悲観的シナリオを回避するには、今までの延長線上ではなく、多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる、新しい働き方・働く場を創り出す必要がある。新しい働き方・働く場を創る主役は、企業や行政だけではない。働く一人ひとりだ。とりわけ、少子化によりマイノリティサイドになる若年層は、この問題に直面せざるをえない。このような2025年に向けては、自ら創造的な働き方、生き方を実現できる人材の育成が強く期待される。社会の難しさが増せば増すほど、教育機関への期待は高まる一方だ。課題先進国として世界の最先端を走る日本の未来は、ひとつ間違えればとても暗いものになる。だが逆に、これほど挑戦しがいのある難題もない。私たちが自ら答えを見つけ出し、一人ひとりがいきいきと働く社会を実現できれば、未来は明るい。いきいきとした2025年を迎えることができるかは、私たちの「働く」をめぐる創造性にかかっている。2025年にかけて、個人のキャリア形成はさらに難しくなっていく。職業人生が長期化する中で、ひとつの企業、職種だけで生涯のキャリアを全うできなくなっていくからだ。環境変化が激しい状況下では、特定の専門力にとどまらない、行動特性や地頭などの基礎力や環境適応性に代表される職業的態度が、個人のキャリアを支えるようになる。今後は、このようなキャリアの礎となる能力や態度を学生に身につけさせることが、教育機関にも期待されるようになるだろう。今後は、加えて、人的ネットワーク資本の構築の強化も教育機関に期待される。これまで対人関係は、コミュニケーション力やリーダーシップ等、もっぱら個人の能力として議論されてきた。だが、そのような能力だけでなく、人的ネットワークそのものが価値を持つ時代になってきている。例えば、労働市場が流動的な諸外国では、人的ネットワークを通じた職探しが一般的である。毎日、顔を合わせる家族のような“強い紐帯”よりも、1年に一度会う学生時代の同窓のような“弱い紐帯”を持つ人ほど、職探しがスムーズであるというグラノベッターの紐帯理論がよく知られている。また、企業は近年、志向するようになっているほかの機関と連携したオープン・イノベーションも、従業員の人的ネットワークに依拠した仕組みである。これまで教育機関は知識を学ぶ場だと位置づけられてきた。だが、メンバーシップ型社会である日本では、人的ネットワークそのものが強い価値を持つ。アルムナイ等、教育機関は、本来、人的ネットワークの形成機能が有している。その機能をより前面に出し、強めていくこともまた重要だろう。いきいきと働く社会を実現するために特集 2025年の大学教育に期待されること

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