カレマネ
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16リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015―――2025年の企業や雇用の状況は、どのようになっているのでしょうか。今回のテーマである2025年に向けた大学改革の方向性をお話しする前に、その前提として、企業のビジネス環境や個人の働き方がどう変化していくのかをお話ししたいと思います。近年、経済のサービス化やITの進展により、企業の盛衰のテンポが格段に速まっています。アパレルのSPA(製造小売業)や飲食チェーン等が典型例ですが、サービス産業は、製造業等とは違った発達の道筋をたどります。一つのサービスのパターン(業態)を確立できたなら、それをできるだけ速いスピードでまずは日本全国、さらには海外へと展開していきます。展開の過程では類似のサービス事業者と激しい競争が起こり、競争に負ければ急拡大したチェーンを一気に縮小することもある。「5年前に急成長していた企業が、もう衰退してしまった」といったことが頻発します。変化のスピードが激しく、変動も激しくなってきています。そうした事業環境で競争に勝っていくには、スピーディーな事業展開が非常に重要になります。新卒を正社員採用して、一から育成していたのでは間に合わないという場面も出てくる。また労働人口が減少する中、事業に必要な人員を確保するためには、女性や高齢者、外国人も今以上に活用していかなければならない。それぞれ求める働き方や制約が違いますから、標準的な労働形態で正社員として雇用するだけではなく、多様な労働形態で人員を構成する必要が出てきます。サービス企業同士は、提供するサービスの質でも厳しい競争にさらされることになり、競争に勝ち抜くため、高度な知識・能力を持ったプロフェッショナル(プロ)が事業に参画することを求めていきます。こうしたプロは、高度な人材であるほど正社員として雇用することになじまなくなっていくでしょう。真のプロほど、仕事のプロセスやかけた時間では●PROFILE1983年 株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。現在、労働政策審議会 職業能力開発分科会、ダイバーシティ経営企業100選運営委員会等の委員を務める。著書に、『会社を強くする人材育成戦略』、『キャリアデザイン入門Ⅰ・Ⅱ』(日経文庫)ほか。専門は人材マネジメント、労働政策、キャリア論。リクルートワークス研究所 所長大久保 幸夫2025年。企業のビジネス環境や、それに対応した雇用・人事管理のあり方が大きく変化していく中で、個人の働き方やキャリア観はどう変わっていくのか。変化に対応するため、大学にはどんな改革が求められるのか。労働・雇用問題を取り扱うリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長に展望を聞いた。(聞き手/本誌編集長 小林 浩)大学は、“個人のキャリア自律”の実現を支える改革を
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