カレマネ
17/64
17リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015なく、仕事の内容で契約を結び、結果を正当に評価されることで報酬を得たいと考えるようになるからです。こうしたプロ人材は、正社員として雇用されるよりも、個人事業主であったり、数人のプロ同士で会社を設立したりという道を選んでいくでしょう。米国でもこの10年、フリーランスで働く人が急激に増加しています。企業にとっても、必要に応じてプロ人材と契約を結ぶほうが、素早い事業展開が容易になります。プロ人材側も仮にある企業の事業が縮小し、仕事を失うことになっても、自分の専門性を活かせる別の企業と契約を結べばいいというようになっていく。サービス経済が進展する、変化のスピードが速く変動も激しい環境では、雇われない働き方は企業側と個人、双方にメリットがあるのです。プロ人材への志向や働く人材の多様化が、正社員中心だった日本型人事管理を、多様な働き方に対応する方向への移行を促すことを述べてきました。こうした人事管理のあり方の変化は、正社員の新卒一括採用という慣行にも影響を及ぼすでしょう。大学を卒業してすぐに正社員として就職するというルートは、今後細くなっていく可能性があります。現在大学による学生の就職支援は、新卒一括採用を前提に進められていますが、それも変化が求められるかもしれません。―――そのような時代には、個人の働き方はどのように変わっていくのでしょうか。日本型人事管理の変化を、別の側面から見てみましょう。かつての日本企業は、多くの社員に45歳くらいまでは課長、次長クラス程度へは昇進の可能性があり、そのことが企業への忠誠心や仕事へのモチベーション維持に貢献していました。ところがここ10年、多くの企業で30代くらいから次世代リーダー候補の選抜が始まり、管理職になれる人・なれない人が早い段階でくっきり分かれるようになってきました。例えば40代の管理職比率は、20年前に比べて3割減っているというデータがあります(図表1・2)。「遅い昇進」という慣行がなくなってきていることと、賃金カーブのフラット化が進んでいることは、ここ10年における日本型人事管理の大きな変化といえます。所属する企業でリーダーにはなれないとするなら、自分はいったいどんな職業人生を歩んでいくのか。会社と相談しながら、自律的にキャリアプランを考えていくことが、より多くの社員に求められるようになってきています。こうした状況に加えて、先に述べたように変化のスピードが速く変動も激しい中で1つの企業で正社員として長期に雇用され続けることが難しくなっていること、プロ人材への需要が高まる中、どの専門性の山を登っていくのかを自ら決めていく必要があることなど、働く人々にキャリア自律を求める方向に、社会は動いてきています。それなのに、働く人々のキャリアへの意識はさほど高まっていないことを示唆するデータがあります。厚労省の実施する能力開発基本調査に、「職業生活設計は自分で考えたいか、会社に提示してほしいか」を聞く質問がありますが、「自分で考えたい」という回答はここ十数年、60%後半か特集 2025年の大学図表1 次世代リーダー育成プログラムの対象年齢:平均年齢全体 (n=98) 無回答 平均年齢 40歳以上 35歳以上40歳未満 30歳以上35歳未満 (%) 30歳未満 5.1 22.4 20.4 36.7 15.3 36.84 出所:リクルート ワークス研究所「人材マネジメント調査2013」 図表2 40歳代の部長・課長比率 (1000人以上企業、大卒・大学院卒の男性)25 30 35 40 45 50 55 60 13 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 00 99 98 97 96 95 (%) (年) 52% 35% 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 産業構造の変化により、人材の“プロ化”と働き方の“多様化”が進む
元のページ