カレマネ
19/64

19リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015―――人口減少時代を迎え、大学経営も厳しさを増していきます。前述のようなビジネス環境や働き方の変化を想定して、大学はどのような改革の方向性が考えられるのでしょうか。日本の大学の大半は地方にあります。またそうした地方の大学ほど今後の経営は厳しくなっていくでしょう。こうした地方の、比較的小規模な大学を念頭に置くと、改革の方向性は2つ考えられます。第1の道は、ニーズはさほど多くないが全国的に求められている職域に特化し、上記のように職業能力評価や職業教育を充実させていくことです。「その大学に行かなければ、その職種のプロになるのは難しい」という地位を築くことができれば、全国から学生を集めることが可能になるでしょう。ですがこの道はどの大学にも適しているとはいえません。オンリーワンを目指すわけですから、自ら個性を創り出していく必要があります。大学経営のイノベーションが必須で、地位の確立にはかなりの難しさが伴うでしょう。もう一つの道は、大学が存在する地方のニーズに特化していく方向です。大学を中心に半径数十キロ、学生が通学可能な圏内に存在する企業や産業のニーズを調べ上げ、その要望に応えていきます。大学の職業能力評価や職業教育改革の第1段階で、企業の一般的な能力育成の部分を大学が受託し、企業向けにカスタマイズしていく可能性を述べましたが、そうしたサービスを提供する相手が、地元企業となるイメージです。多くの大学にこちらの道をお薦めしたいのは、同じ道を進む仲間が得やすいからです。日本の大学の大半は地方に存在しますから、それぞれの大学がそれぞれの地方のニーズに寄り添っていくことが可能になります。大学同士がお互いをベンチマークし、成功事例を学び合うことも容易になるのです。2018年には18歳人口が大きく減り始めます。これまでは若年人口の減少を大学進学率の上昇がカバーする形で、大学への少子高齢化の影響はマイルドなもので済んでいた部分がありますが、いよいよ本格的に厳しい環境を迎えることになるでしょう。大学における職業能力評価や職業教育の改革に関していえば、2025年の段階で、第1段階がかなりの大学に広がっているような状況にならなければ、大学も、そして企業も新しい成長の道筋を描くことは難しいのではないでしょうか。大学の改革には時間がかかることも考え合わせると、一刻も早く今回示したような改革の方向性を実行に移していく必要があると考えています。(まとめ/五嶋正風 撮影/西山俊哉)特集 2025年の大学職業能力の体系化と育成手法が確立できれば大学で学ぶことや学位が、職業人としての能力保証になっていく図表4 個人のキャリア自律の実現シナリオ第1段階 第2段階 職業能力評価 職業教育手法 企業・産業界、地域 大学 の進化・確立 協働 共通認識化 職業能力 の育成 →知識・経験の 蓄積 大学で 学ぶことや 学位が、 職業人としての 能力保証に より多くの人が 自律的にキャリア形成 できるように

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です