カレマネ
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留学生を送り出し、逆にセネガルやカメルーン、ガボン、ギニア等のフランス語圏の国はフランスに留学する傾向が強い。中南米は最近、メキシコとアメリカの間でそれぞれ10万人と5万人を相手側に送り出す協定が結ばれるなど、北米との留学交流はより密接なものとなりつつある。また特にブラジルは科学人材育成の留学プログラムに力を入れ、日本を含めイギリスやカナダへの留学も増加している。オセアニアは圧倒的にアジアからの留学生が多く、中国、インド、韓国のほか、東南アジアのマレーシア、ベトナム、インドネシア、シンガポールあるいはスリランカやネパール等、南アジアからの留学生が多い。逆に送り出しは先進国の英語圏やドイツ、フランスが中心であるが、近年オーストラリアが進めている新コロンボプランでは、日本を含むアジア太平洋地域との留学生交流や関係強化が奨励されている。活発化する世界の留学生動向のなかでも量的拡大が著しいのは中国、インドといった留学生送り出し大国を擁するアジアである。アジアからの留学生は引き続きアメリカを中心とする欧米志向が強いが、前述の通り中国の受け入れ国としての台頭は、韓国やアメリカのほか、インドネシア、ベトナム、インド、カザフスタン、パキスタンから中国への留学増加という新しい流れも生んでいる。2025年に向けた動向を左右する4つの要因以上概観したように、世界の留学生の動向は、従来の途上国から先進国、あるいは先進国同士の移動という方向にとどまらず、アフリカ域内あるいは中東からアジアへの地域間移動、さらには南北間の旧来からある序列を越えた新たな動きが見られる。留学生移動の要因について、学生の側の移動理由からまとめると地理的要因、政治的要因、教育的要因、社会の安定度、経済的要因の5つが指摘されているが(De Wit ほか, 2008)、学生移動をとりまく社会的課題という点からまとめると、2025年に向けての動向を左右する要因として以下の4つが指摘される。 第一に知識基盤社会の形成発展が求められる中で、経済発展を担う人材育成政策及び雇用の動向を反映した経済的要因である。今日、各国政府は、留学生数もさることながら、より優秀な人材の確保と育成に焦点をあてるようになっており、学生もまた、留学による学びが就職を含めた将来のキャリアにどう役立つのかという点を非常に重視する傾向にある。留学先として、留学終了後の就業の機会をめぐり、アジア諸国でオーストラリア留学に注目が集まったり、アメリカ留学を終えた中国人、インド人学生が、卒業後もかつてのようにそのままアメリカに残るわけではなく、本国に戻り起業したりするのはその典型例である。第二は、送り出し国と受け入れ国を含む国際関係の動向と戦略としての留学政策である。アメリカで起きた同時多発テロ以降、イスラム圏にとどまらずアメリカへの留学ビザ規制が強化され、特に中東諸国からの留学生移動に影響がでたのはよく知られているが、近年では中国がアフリカや南アジア、中南米との関係強化を図る中で、奨学金付与による人材育成支援として留学生を誘致する例などがみられる。逆に、中国の言語文化普及を目的とした国家プロジェクトである孔子学院の活動がアメリカで批判されたり、軍事・防衛に関連する科学技術と留学政策の関係等は学生移動を制限する動きである。他方、こうした政治的経済的要因が重視される中で、移動を加速させているトランスナショナル高等教育の進展は、第三の要因として連携や協力という新たな可能性を高等教育に付与している。2大学間だけの交流ではなく3大学以上の連携や、政府主導型の連携、さらに地域機構が主導する連携等、留学生移動がもたらした新たな交流のあり方は、MOOC(Mass Open Online Course)といった新たな高等教育の展開にも及び、学生だけでなくプログラムや教育機関そのものが移動するようになっている。今日、学生移動の動向は、それら様々な移動の相関によって決まる。東アジアにおけるキャンパス・アジアやEUの一連のエラスムス計画のように、国や地域を単位としたプログラムにとどまらず、例えばオーストリアの大学がマレーシアや南アフリカに分校を設け、南アジアのスリランカに同大学への予備課程が設けられている関係から、スリランカからマレーシアへの留学の流れが生まれているのはその例である。リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 201522

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