カレマネ
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35ドラスティックな変革の背景にあるのが、強力な法人組織の存在だ。「理事会、常務理事会の指導力が大きい。頭脳、人脈、広い視野を有する優秀な人材が揃っている」と竹村学長は話す。特筆すべきは理事会の構成である。学校法人東洋大学の理事会は、専任教職員、卒業生、学識経験者が、それぞれ3分の1を占めている。このうち卒業生、学識経験者は、業績及び社会的評価の観点から学外有識者としてふさわしい者が選出される。理事会の約3分の2が学外有識者によって構成されており、大学外の意見が反映されやすいところに、東洋大学における管理運営の特徴がある。改革の成果と次なる課題東洋大学における改革の現時点の成果について竹村学長は、「少子化の中ではあるが、入学者の学力レベルは上昇傾向にあり、評価されていると考えている」と話す。特に2015年入試では、文学部、経済学部を筆頭に、志願者数が大幅に増加した(図4)。国際化に対する取り組みについても、海外インターンシップの開拓と、参加学生の増加が噛み合って進んでおり、一定の手ごたえを感じているという。また大学全体が未来を見据えた変革を重ねる中で、職員の意欲も高まっている。近年では、大学全体の国際化の方針に対応すべく、英語力を重視した新入職員の採用や海外協定校における長期研修、1年間の国連出向等、グローバル戦略を担う職員の育成が積極的に推進されている。一方、東洋大学の更なる成長に向けた具体的な課題としては、語学教育の徹底、研究の高度化、本学の教育研究活動のIRに基づく分析と検証、FD活動による授業手法の改善等による質保証の確立が、一層の力を注ぐべき課題であるという。またSGU構想とも関わり、世界標準の質保証システムの設計に向けた、情報収集、研究、分析機能の強化が企図されている。「アジア版エラスムスを実現するためにも、諸外国の高等教育システムについて専門的な調査や分析を担う組織・人材の配置をしていきたい」と竹村学長は話す。変わらない理念と、不動の目的東洋大学が10年後の完成を目指す「TOYO GLOBAL DIAMONDS」構想は、創立125周年の「未来宣言」で示した方向性のもと、SGU採択事業として具体化されたビジョンである。同構想は、キャンパスの都心回帰をいち早く進めたことによるアドバンテージと、強力な法人組織の存在が改革を加速させたと言える。今後の数年間においても、3つの新学部の設置構想、新たなキャンパスの開設等、目に見える大きな変化が予定されている。学長になった2009年からの改革を、竹村学長は次のように振り返る。「東洋大学は明確に変わった。ただ、“哲学すること”を根本とする建学以来の理念は変わらないし、国際化は不動の目的として揺るがない。大きな長期ビジョンを考えつつ、細かい対応は時々に応じて決めてきた」。東洋大学の掲げる時代を超えた理念と目標は、時々の経営・教学上の改革を一過性に終わらせることなく、大学を含めた学校法人全体の持続的な成長へと繋げていくための得難い基盤であるといえるだろう。2025年と、さらにその先の未来に向けて、「哲学をする」ことの伝統がどのように引き継がれ、花開いていくのか。「アジアのハブ大学」を目指す東洋大学の今後10年間の展開から、ますます目が離せない。リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015(丸山和昭 福島大学総合教育研究センター 准教授)特集 2025年の大学図4 学部別 志願者数推移 (※第1部のみ)0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 90000 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 52340 58893 58109 67535 71079 65693 63507 69490 60680 81243 総合情報 理工 食環境科 生命科 ライフデザイン 国際地域 社会 法 経営 経済 文 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 第1部 計 (人) (人) 学部別 第1部 計

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