カレマネ
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36今、時代は大学に「経営体」たることを要請している――国内外でいくつか大学を訪問していると、そう感じる場面が確実に増えてきた。大学には、従来の「運営」を越えた、より高度で精緻な「経営」が求められている。外部環境が年々厳しさを増す中、大学「経営」の確立・向上は待ったなしの状況だ。ただ、そうした現状認識や危機意識があることと、それを現場で共有して実効性ある改革につなげていけるかは別の話だ。確かに、大学におけるPDCAサイクルの意義は広く認知されるようになったが、それを実際に「廻す」ことは言うほどに易しくはない。しかしだからこそ、PDCAが本来の意味で機能するようになると大学は大きく変化し始める。本稿では、そんな成功事例として、福岡工業大学(以下、福工大)に目を向けたい。福工大は、過去20年弱の間に徹底した経営管理システムを運用し、改革を実際の変化につなげることに成功してきた、今勢いのある大学だ。10年後の2025年における大学像を見通す上でも一つの示唆を与えてくれるにちがいない。福岡市東区にあるキャンパスを訪ね、下村輝夫学長、大谷忠彦常務理事、山下剛事務局長にお話を伺った。福工大に注目する理由実は、本誌ではこれまで福工大を二度取り上げている。一つが、中期計画とそれに基づく行動計画を策定して成果を上げている事例(2009年156号)として、もう一つが、次世代経営層としての職員育成を推進している事例(2011年166号)としてだ。前者では、中期計画に基づく学園運営を取り上げた。福工大は、1996年あたりから民間企業出身者を公募で中途採用する一方、かれらの民間的発想を梃に、1998年から5ヶ年の中期経営計画(マスタープラン:MP)を策定して大学経営を進めてきた。もちろん、外部向けの単なるレトリックとして中期計画があったわけではない。MPの策定プロセスは、学内に公開して教職員の合意形成を促すとともに、そこで決まった計画は、各組織の年度ごとの行動計画(アクションプログラム:AP)に落とし込み、その遂行に必要な予算も競争的に配分した。計画の徹底した実行を目指してきた。他方、後者の記事では、現場で計画遂行を主体的に担える人材の育成プログラムに光を当てた。福工大は2009年、FASTプログラム(Fukuoka Institute of Technologyによ中期経営計画をPDCAで廻し、大学経営を高度化リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015大谷忠彦 常務理事福岡工業大学C A S E3下村輝夫 学長

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