カレマネ
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39信頼関係も徐々に醸成されてきて志願者増加にもつながっているというからまさに好循環だ。次の10年に向けた課題それでは、福工大は2025年に向けて、今後10年の課題をどう捉えているのだろうか。最後に下村学長に伺った。学長は、まずは志願倍率が10倍を超えるようにしたいという。2015年度入試では、3学部計915名の定員に対して6,564名の志願者(図表1参照)で、志願倍率は7倍強だった。これを10倍に伸ばすには、さらに2500名余りの志願者が必要になる。そのために、福工大が進めてきた取り組みをマーケットにどう認知してもらうかが鍵だと学長は強調する。福工大が過去20年にわたって改革を推進してきた成果は、確かに実をつけ始めている。例えば、福工大は昨年度、文科省と日本私立学校振興・共済事業団が共同で改革の財政支援を行う「私立大学等改革総合支援事業」に選定された。しかも、同事業が設定する4つの目的全て─「教育の質的転換」「地域発展」「産業界や他大学等との連携」「グローバル化」―での選定だ。昨年度は、文科省の大学教育再生加速プログラム事業にも選定されていて、新たな取り組みが始まっている。ただ、下村学長の視線はもっと先に向けられているようだ。確かに成果は上がってきているが、勝負は、受験生のところにどう結びつけていくかだと学長は言う。エリア別に見ると本州から学生を集めるのが難しくなってきているのも事実で、学生の出身地は地域化が進んでいる。地域の人口が縮小するなか、どう生き残るかが課題だ。こうした状況をどう打開するか。学長は、福工大はもっと「尖る」必要があるという。そのためにも、福工大が進めてきた教員力・職員力や学生支援力の向上を踏まえ、そのレベルをさらに高めていく必要がある。オープンキャンパスで研究者としての教員の姿に触れて入学してくる学生も少なくない。科研費の獲得額(2014年度で41件7131万円)を1億円に引き上げ、研究も含めた地域連携をさらに活性化していくこと、そのために教員の意識を高め力量向上を図っていくことが、自らの最大のミッションだと学長は言い切る。その意味でも、職員の米国派遣を行ってきたFASTプログラムを継承し、2013年からLEADプログラムとして展開できていることに期待を掛ける。LEAD(Leadership of Education and Administration Development)は若手教員2名・職員1名でチームを編成して米国CSUEBに1〜2カ月派遣するプログラムで、教職員が共に学び、毎日議論をするのだという。回数を重ねるごとに成果が見え始めていて、全学への波及効果も期待できるようだ。福工大は「九州No.1の教育拠点」として広く社会に貢献することを目指している。そうしたビジョンを達成するため、福工大は中期計画をPDCAサイクルで廻して機能させ、「大学経営」の高度化を図ることに成功してきたといっていい。当面の課題は、これまでの成果を第一線で支えてきた世代の交代が近づくなか、次世代を担う教員・職員の育成だ。これからの福工大の10年は、これまで培ってきた「職員力」を基盤に、教職協働のあり方をもう一段高め、経営理念「すべての学生生徒のために」をさらに追求していくことになるだろう。福工大が自らの強みにどう磨きをかけていくのか、次なる挑戦が楽しみだ。リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)特集 2025年の大学点検・評価 Check 改 善 ●成果・報告 (教育・研究活動報告書) ●業務遂行 ●業務問題解決・改善 ●AP実施状況確認 ●自己点検・認証評価 ●外部評価(格付) コンプライアンス 情報公表 Action 実 行 Do 計 画 中期経営計画(マスタープラン) Plan 部門別中期運営計画・中長期財政計画 一般予算 特別予算 行動計画(アクションプログラム) 学園全体の骨太の方針 ← ← ← MPに基づく部門別の 方針・計画/ MPの財政的根拠 各セクションでの 具体的計画(単年度) (約450件) AP MP 図表2 福工大のMP・APとPDCAサイクル
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