カレマネ
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40リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015今回の特集では、2025年を見据え、産業構造や働き方の変化、世界の留学生の動向、政府の教育改革の意図と方向性等について、多方面からの考察を行ってきた。人口増加、進学率の上昇に支えられてきた大学の量的拡大フェーズは終焉を迎えている。これからは、成熟マーケットの中で、いかに大学で学ぶことの価値を社会に発信し、大学教育を経て、社会に貢献できる人材を送り出せるかがポイントになる。つまり、大学ごとの個性がより重要になってくるのである。現在進められている教育改革は、社会の変化と無縁ではない。大学の課題は、社会の課題と直結する。改革の大きさは、大学に対する社会からの期待が大きいことの裏返しのように思える。各大学は価値をどのように生み出していけばよいのか。まとめのページでは、編集部の独断であるが、これからの大学が求められているものは何かを考察した上で、人口減少社会に向けて、個々の大学がどのような競争戦略をとっていったらよいのか、マーケットセグメント別に考え方を整理した。これからの大学で求められるものとは答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」では、“大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、大学教育において「教員が何を教えるか」よりも「学生が何を身に付けたか」を重視し、学生の学修成果の把握・評価を推進することが必要である”とした上で、“アドミッション・ポリシーと併せて、学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針の一体的な策定を法令上位置付けることが必要である”と記している。私個人の意見であるが、これは図表1のようなことを行っているのではないだろうか。どの大学にも建学の精神や理念、ミッションがある。言い換えると、それは学校の根本を成す独自性であり、DNAである。それに基づいて、学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)が一体的に策定されるべきである。これを一般社会に分かりやすく翻訳すれば、「この大学を卒業すると、何ができるようになって、どのような人材を社会に送り出すのか(ディプロマ・ポリシー)」、「それができるのは、どのような理念に基づき、どのような教育の仕組みがあるからなのか(カリキュラム・ポリシー)」、「そのためには、どんな志向や意欲を持った学生に来てほしいのか、どんな要件(能力)が必要なのか(アドミッション・ポリシー)」ということではないだろうか。アドミッション・ポリシーについては、カレッジ・レディネスという言葉も参考になるだろう。つまり、この大学に入学する学生には、どのような準備をしてきてほしいのか、ということである。これからは、大学の個性・理念・特色を活かして、「どのような人材を社会に送り出すのか」。この大学はこんな人材を育成しているという、“ならではの価値”をコミットすることが、高等教育機関としての大学の最大の価値になってくるだろう。そうすると、この入口(入学)→中身(教育・研究)→出口(就職)までを一貫させた経営、教育マネジメントを行っていくことが必要になる。エンロールメント・マネジメント(EM)と呼ばれるこの仕組みを動かしていくためには、大学経営層と教員、職員の理念の共有、協働が重要となってくる。現在取り組みが始まっているIR(Institutional Research)も、このEMの実現が大きな役割のひとつだと考えられる。逆に言えば、一貫したマネジメントなくしては、せっかくのIRも絵に描いた餅になってしまうだろう。中長期的には、大学が入学時の一時的な学力で評価される文化はこれから変わっていくだろう。答申にも書かれているように、世界的な方向性として、教員が何を教えたか(input)重視から、学生が何ができるようになったかまとめ小林 浩 本誌編集長2025年を展望する大学に求められるもの、セグメント別マーケティング戦略
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