カレマネ
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となる。縦軸には志願倍率を置いているが、近年「実質倍率」が把握できないため、公表される「名目倍率」である。名目倍率は、もちろん大学にもよるが3倍ついていないと、定員未充足となる割合が高い。これも私学事業団の志願者動向によると、2014年度入試結果の平均倍率が7.53倍ということで、8倍以上を高倍率とした。①【大手総合人気大学群】 (リーダー)大規模×高倍率のセグメントを「大手総合人気大学」と区分する。この区分は、マーケティング上では、リーダーのポジションになる。業界を主導する立場であり、フルラインアップで市場全体の規模を拡大させることにある。つまり、海外の有力大学と伍して戦い、日本の高等教育マーケットを牽引する役割がある。このセグメントの大学は、2018年までに法人としてのブランド校のポジションを確立し、グローバル化への対応が必須になる。また、日本国内では、国立大学との優秀な学生の争奪戦となる。2025年に向けては、総合大学の領域強化策として他大学との吸収・統合(M&A的拡大)や収益構造の多角化といった戦略、国内外を含めた学生の多様化が課題となるであろう。②【中規模中倍率大学】 (チャレンジャー)中規模×中倍率大学群は、マーケティング上では、チャレンジャーとなり、業界上位のシェアを持ちながらもトップシェアではない大学群となる。ただ、地域によっては、このセグメントが地域のリーダーとなっている場合もある。このセグメントの戦略としては、①のリーダー群とは異なる価値創造を意識しながら、2018年までに生き残り大学としてのポジションを確立することにある。なぜ、このセグメントでも“生き残り“なのか。それは、今後少子化の進行が想定される中では、志願倍率の下方圧力が高まるため、現在このセグメントでも、安心することはできないと考えられるためだ。また、今後地域の少子化に対応するため、地方都市を中心に強化が考えられる公立大学との競争も激しくなる。また、大学ブランド力が低下すると、付属校の募集悪化が懸念される。そうした未来に向けて、提供する価値の明確化を進めながら、その価値に合った学部学科の再編や地域社会や企業との連携、卒業生の組織化等が課題になるであろう。③【カテゴリーキラー】 (ニッチャー)小規模×高倍率群となる、このセグメントを私はカテゴリーキラーと呼んでいる。マーケティング上では、ニッチャーと言われ、業界内でのシェアは小さいものの、独自のブランドや個性によって、特定市場の支持を集めるセグメントである。このセグメントは、大学や学生にどのような個性を持たせるか、それを社会に浸透させるかが最大のポイントとなリクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 201542図表3 中長期を見据えた大学セグメント別競争戦略の考え方 小規模大学 (1学年~750人) 高倍率(8倍〜) 中倍率(3〜8倍) 低倍率(〜3倍) 中規模大学 (1学年750~2500人) 大規模大学 (1学年2500人~) ③ 【カテゴリーキラー】 (ニッチャー) ・ カテゴリーキラーとしての特徴付け ・ 形容詞のついた付加価値の高い人材の育成 ④【淘汰予備軍】(フォロワー) ・定員確保 ・経営再建 ・専門学校との学生争奪戦 ②【中規模中倍率大学】(チャレンジャー) ・ 2018年までに生き残り大学としての ポジションを確立 ・ 地元公立大との戦い ・ 大学ブランド力低下による 付属校の募集悪化 ①【大手総合人気大学】(リーダー) ・ 2018年までに法人として ブランド校ポジションを確立 ・ グローバル化への対応 ・ 国立大との戦い 志願倍率 大学セグメント別経営課題の整理 海外の有力大学 定員規模 【大手総合人気大学群】(リーダー) ・中長期のポジションの確立(ブランディング) ・より質の高い入学者の確保 ・募集エリアの拡大(地方戦略の強化) ・学部・学科新設等による定員増 ・優秀な留学生の獲得、グローバル化への対応⇒国際競争に対応できるリーダー層の育成 ・他大学との統合・連携(M&A的拡大) ・付属校、係属校の設置 ・収益の多角化(寄付金等) 【中規模中倍率大学群】(チャレンジャー) ・生き残りのポジション確保(個性化・差別化、ブランディング) ・志願者数(「量」)の確保(歩留り向上策) ・入学意欲醸成を行いたい(初年次教育・就業力育成) ・学部・学科の再編(商品ラインアップの見直し) ・付属校の募集強化 【淘汰予備軍】(フォロワー) ・毎年の定員確保 ⇒歩留まりの向上(リアル強化) ⇒地元密着型(Local to Local) ⇒ 地元高校リレーション強化 ⇒定員補充のための、留学生の取り込み ⇒定員の縮小による充足率向上 ・学部・学科の再編(商品ラインアップの見直し) 【カテゴリーキラー】(ニッチャー) ・差別化による特徴強化(どんなプロを育成するのか) ・プロの育成(就職、資格、語学、地域、業界etc.) ・資格+人間力 マーケティング上の課題 募集戦略の位置づけ 広報 戦略 長期 個性化 差別化 理念に共感 した学生確保 販促 戦略 短期
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