カレマネ
43/64
43リクルート カレッジマネジメント193 / Jul. - Aug. 2015る。このセグメントには、教養、医療、国際、資格等特定分野に強い大学が多く存在する。今後は、どのような人材を育成するかが課題になる。例えば、同じ看護師でも、大学院まであるのでプロフェッショナルな看護師、チーム医療に強い看護師、ホスピタリティにあふれる看護師、英語ができる看護師等、どのような付加価値をつけて社会に送り出すかが大きな課題となるであろう。④【淘汰予備軍】 (フォロワー)規模によらず、恒常的に定員割れの状態が続いている大学群となる。お叱りを受けそうな名称になってしまったが、2025年には机上の計算では100校以上がなくなってしまう。現実にそんなことが起こるかどうかは不明だが、残念ながらそうした対象となってしまっているということである。地域によっては、チャレンジャーの次のセグメントが、このセグメントという場合も少なくない。マーケティング上でいうと、フォロワーと呼ばれ、トップシェアを狙う位置にもなく、カテゴリーキラーのように特定市場での際立った独自性も有していない。現状、毎年の定員確保、専門学校との学生争奪戦、確保した学生の学習意欲の醸成に経営パワーの多くが割かれていると考えられる。このセグメントの課題は、まずは地域で選ばれるための価値を明確化することにある。その価値に基づいて、適正な定員規模でカテゴリーキラーを目指すのか。それとも、学部学科の再編や、地域で活躍できる人材の育成等、抜本的な改革によってチャレンジャーの位置まで引き上げることができるかが課題となる。セグメント別の広報・募集戦略募集戦略を見てみると、志願倍率が高いほど、中長期の広報戦略やブランド戦略に力をいれることができる。一方で、倍率が低いほど、短期の企業でいうところの販売促進的な戦略を取らざるを得なくなる。いずれにしても、どの私立大学にも、建学の精神や教育理念があるはずであり、大学での経験価値を通じて、どのような人材を送り出すのかを明らかにすべきである。これこそが大学の存在価値であり、社会に発信していくことで、理念に共感した学生を確保していくことがますます重要となってくる。18歳以外のマーケティング戦略以上は、18歳をターゲットとしたマーケティング戦略だが、2018年以降の市場縮小に向けて、今から検討しなければならないことを図表4に整理した。実は、これは2012年175号の特集「2020年、その時大学は」に私が書いた記事の再掲である。つまり、2012年からそれほど環境は変わっていないとも言える。既に予見されていることとして、(1)産業構造が変化することによって生じる社会人の学び直しニーズ、(2)元気な高齢者が増えることによるシニア層の学びニーズ、(3)世界の留学生増加に対応した学生交流ニーズ、が考えられる。これらのニーズに対応するため、①~⑥のポイントを挙げている。前回の記事から3年経って、進展しているのは、⑤が残念ながら大学主導ではなく、政府主導で検討され、職業教育を行う新たな高等教育機関の創設を2019年を目途に行うことが発表されたことである。また、⑥のオンライン教育についても、MOOCsが話題になっているものの、実際は初等中等教育の方で活用が進んでいるように思える。特集巻頭(4ページ)にも書いたが、未来は見えないし、正解もない。まさに、大学こそ過去に学び、未来を創造する公器ではないだろうか。今日と同じ明日が、10年後もある保証はどこにもない。まずは18歳人口が再び減少フェーズに入る2018年までが重要だ。この期間を“受動的”に過ごすのではなく、知恵を働かせて“主体的”に未来を選択していくことが必要である。受動的から主体的に、これこそ大学が学生に求めているものなのだから。特集 2025年の大学上記ニーズへの対応ポイント ①優秀な留学生の取り込み ②他大学/短大との統合 ③大学間連携の拡大(国内外)⇒海外キャンパス等オフショア化も ④社会人の学び直しニーズの獲得 ⑤仕事・業界に直結した高等教育 ⑥ICTの進化で、いつでもどこでも学べる通信教育 ⇒授業配信がキラーコンテンツに(1)産業構造の変化による社会人学び直しニーズ(2)高齢化によるシニア層の学びニーズ(3)世界の留学生2025年には800万人に増加、学生交流ニーズ2012年カレッジマネジメント175号より一部抜粋して再掲図表418歳人口縮小トレンド(18年~)に向けた新マーケットへの対応
元のページ