カレッジマネジメント194号
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48略という意味とが重ねられている。その取り組みを概観してみよう。これには4つの分野(FIELD)での目標が定められている(図表3)。FIELD 1は、日本人学生の海外への派遣の拡大、FIELD 2は、その逆に、外国人留学生の受け入れの拡大である。これら学生の異文化環境確立のためには、FIELD 3として教育・研究環境の整備が必須である。語学の授業の充実、海外の協定大学の増加、4学期制度の導入等がそれである。そしてこれらを推進するために、FIELD 4として国際化推進ガバナンスの強化が挙げられている。具体的には、外国人教員や海外経験が豊富な教員の増加、国際化推進組織の改革等の取り組みである。それぞれのFIELDは、それぞれ6つのPROJECTにブレークダウンされているため、PROJECT数は24となる。ここで重要なことは、いくつかのPROJECTでは5年後、10年後に到達すべき数値目標が設定されていることである。特筆すべきいくつかをみると、例えば、FIELD 1の日本人学生の海外派遣の拡大では、PROJECT 01として、5年後の2019年には50%の学生を海外へ派遣、そして10年後の2024年には100%即ち全立教大生を卒業時までに海外へ派遣することを掲げている。1学年4000人ほどの学生を4年間のうちに全員海外体験させるとは、壮大な試みである。それについて、吉岡総長は次のように話される。「実は、立教大学には、第一志望で入学してくる学生がさほど多くはなく、早慶や国立大学を落ちて入学して来る者も多いのです。そうした学生は、自信と誇りを持てば必ず伸びることを実感しています。私だけでなく、多くの教員の一致した認識でもあります。こうした、いわば中間層の学生に刺激を与えて伸ばす。そのために、あえて全員海外体験を打ち出したのです」。立教大学の今置かれたポジションへの対処と、そこからの脱却を目指しての取り組みといってよいだろう。FIELD 2では、PROJECT 07の外国人留学生の受け入れの拡大に関して、2014年の500人から2019年には1000人、2024年には2000人と、5年ごとの倍増が計画されている。FIELD 4の国際化推進ガバナンスの強化では、PROJECT 19として外国人教員比率を2014年の14%から2024年には20%へ増加させるとしている。このように、いくつかのPROJECTで明確な数値目標を掲げているのは、この「Rikkyo Global 24」が、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)への申請を視野に入れたものだったからである。そして結果としてSGUに採択されたため、これらの数値は目標を超えて、今や、達成すべき課題となった。数値目標を掲げるにあたって、例えば学生全員の海外体験等、どの程度の見込みを想定して設定したのかという問いに対して、吉岡総長の「確かに、やや背伸びをしているところがないわけでもありません。しかし、絶対に無理な数値を掲げているわけでもありません。数値目標はトリガーの役割を果たします。目標を掲げることで、そこに近づこうという、全学的に結集する力が働いてきます」という回答に、うなずいた次第である。各種の教育活動に数値目標を掲げることに対して批判的な声もあるが、それをトリガーとして使うというのも、一つの方法なのだ。インパクトと繰り返し─広報活動これらの活動をいかに内外に告知・浸透させるかということも、立教大学にとっては重要な課題の一つとされていた。知らせるべき対象としては、第1に高校生、その保護者、高校教員、第2に社会一般、そして第3に学内を含む大学関係者(教職員、学生、その保護者、卒業生)である。それぞれのターゲットに向けて何をどのように伝えるか、戦略を練っての広報活動に力を入れたと、学校法人立教学院の企画部広報課リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015図表3 立教大学の国際化戦略 「Rikkyo Global 24」の目標設定【FIELD1】 海外への学生派遣の拡大 ・学生海外派遣率を、2019年に50%、2024年には100%へ・学生の英語力を、2019年に50%以上の学生がTOEIC®テスト730点相当以上、2024年には100%が600点相当以上に【FIELD2】 外国人留学生の受け入れの拡大・留学生受け入れ数を、2014年の500人から2019年に1000人、2024年には2000人へ【FIELD3】 教育・研究環境の整備・海外協定大学数を、2014年の133大学から2019年に210大学、2024年には300大学へ【FIELD4】 国際化推進ガバナンスの強化・外国人教員比率を、2014年の14%から2024年には20%へ・外国人教員、外国での学位取得者、外国大学での講義・研究歴(1年以上)を有する教員比率を、2024年には70%に2024年の創立150周年に向けて、4つの分野で明確な数値目標を設定Rikkyo Global 24
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