カレッジマネジメント194号
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74リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015常にいい授業なので、新学部でも導入することにしました。学生は、『大人の方達はこんな真剣に仕事しているのかとびっくりした』なんて言うのです。社会にどういう仕事があるのか、それぞれの仕事の社会的な意義、大変さなどを、入学後すぐの早い時期に知ることには、非常に意味があると思っています」ところで、今「地方創生」が注目される中、あえて「都市」を掲げる意義は何だろうか。「世界的に都市への人口集中が進行し、2050年頃には世界の全人口の3分の2ぐらいが都市に集中すると言われています。それで欧米では、都市の問題の解決に向けた『シティサイエンス』が発展し始めているのです。そういう流れの中で、日本でもメガシティ、地方創生等の問題があることは踏まえつつ、日本に限らず都市を創造していこうという、非常にグローバルな学部構想になっています。また、元気あふれ、だからこそ逆に色んな問題も抱えるアジアの都市に注目しながら、豊かな社会とは何なのか、都市を舞台に考えていきましょうという学部なのです」産学連携で進める海外インターンシップ「アジア夢カレッジ」も都市創造学部も、「海外インターンシップ先の確保」が最も苦心するところだという。「まず現地の大学とお互いの信頼を築き、ある程度我々から注文できるような関係を作り、現地企業を紹介してもらう。あるいは産業界で海外に詳しい方、現地でのビジネス経験が豊富な方等をコーディネーターとして入れながら、探していく。ときには現地企業のトップと直接会って交渉する。中国ではそんな形でやってきました。新学部では、日本の企業の海外事業立ち上げに携わり、人材育成にも関心のある方と業務委託を結びました。また、本学は東急グループに入っているので、東急グループがビジネス展開を図っているベトナムやインドネシアについては、関連の日系企業にご協力頂いています」その他にも様々なネットワークを駆使してインターンシップ先を手配する中で、池島学長は、日本とそれ以外のインターンシップの違いを知らされたという。「グローバル企業の方と交渉していると、『うちのインターンシップの定義は、池島さんのところで考えているのとは、ちょっと違うよ』とよく言われます。『いい人材を探すためにやるのだ』と言うんですね。日本のインターンシップは、経団連を含めて、就職に結び付けないことが前提ですから、だいぶ性格が違いますよね。それはそれとして、もう少し会社にとってもメリットのある、win-winになるインターンシップを、産業界とお互いに工夫してやるべきではと思っています」課題は産業界との本当の連携取り組みを進める上での課題として池島学長があげるのは、全学の意識の向上であり共有だ。「これから大学は変わらなくちゃいかんという危機感。あるいは、亜細亜大学はどういう大学を目指すのか。これが全学に浸透していく形に、早くもっていきたい。学外の産業界の方にご協力頂いたり、色んなアウトソーシングなどもあったりするだけに、我々自らがきちんとまとまっていくことが大切なのです」では、亜細亜大学はどういう大学を目指すのか。国際基督教大学、上智大学、青山学院大学など、従来はどちらかと言えば欧米中心のグローバル教育を強みとしてきた大学がアジアに目を向け始めた今後は、「彼らにできないアジア」を考えなければならないと池島学長は言う。「それは、産業界との本当の連携です。アカデミックな先生をたくさん揃えても絶対できないような、泥臭い産学連携を我々はやっていこうと。世界の中で人材争奪戦が行われている現実の中で、産業界はいい人材の採用のために、給与体系や採用方法を含めたグローバルな人事施策を考える。我々大学はいい学生の確保のために、日系企業で活躍する留学生、海外企業で活躍する日本人を育てる教育体系を考える。入口から出口までのパッケージでお互いに協力して、議論もしながらやりませんかと、産業界に働きかけています。それをしていかないと、亜細亜大学だけでなく、日本の大学・日本の企業が近い将来、いい人材をとれなくなるという強い問題意識を持っています。日本人の学生に対する大学教育がこのままでいいのかということも、同じ流れの中にあることだと思います」(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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