カレッジマネジメント194号
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78 前号では高等教育の費用負担問題を取り上げたが、家計や財政の現状を踏まえると、個々の大学の存続や大学システム自体の持続可能性の確保のために、社会の支持が一層重要になってきたことは言うまでもない。その一方で、大学と社会の対話は多くの場合、それぞれの主張を述べ合うだけであったり、印象論や抽象論の域にとどまったり、噛み合った議論が十分に展開されているとは言い難い。大学自体が多様である上に、何をもって社会とするのかも、論じる内容や文脈によって異なる。高等教育に関する政策が次々に打ち出され、国公私立を問わず、大学はそれに翻弄されている面も否めない。リーダーシップの発揮を求められる学長は、国の政策動向を学内に伝え、それに沿った改革を促そうとする。役職教員や幹部職員等にはその意思が多少は伝わるものの、現場に行けば行くほど何のための施策かの理解も不十分なまま、ただ忙しく働かされているといった感覚だけが増していく。このような状況が際限なく繰り返されているように思えてならない。国の政策の背景には、財政当局や産業界等からの強い要請があると言われている。しかしながら、産業界の声とされる事柄も、個別に経営者の話を聞くとかなりニュアンスが異なっていることが多い。業種、規模、経営者個人の考え方等によって、大学に対する期待や要請が異なるのは当然である。むしろ、個々の大学がステークホルダーである多様な主体と直接に対話を重ね、五感をもって社会の様々な問題を感じ取らなければならない。対話を通してそれぞれの主体による大学への理解も深まる。このような地道な対話の積み重ねなくして、社会に支持されることは難しい。大学の在り方を問い直す2つの大きな改革現在、国のレベルにおいて大学の在り方を問い直す2つの大きな改革の検討が進んでいる。一つは「高大接続システム改革」であり、もう一つは「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方」に関する検討である。「高大接続システム改革」については、2013年10月の教育再生実行会議第四次提言や2014年12月の中央教育審議会答申を受けて、現在その具体的方策の検討が進められている。その目的は、義務教育段階を基盤として、高等学校段階以降の教育において、「学力の3要素」である、①十分な知識・技能、②それらを基盤にして答えのない問題に自ら答えを見出していく思考力・判断力・表現力、③これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を、一人ひとりの生徒・学生に身につけさせることにある。そのために、高等学校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜改革をシステムとして一体的に行うとした上で、アドミッション・カリキュラム・ディプロマという三つのポリシーに基づく大学教育の質的転換や認証評価制度の改革、個別大学における多面的・総合的評価による入学大学を強くする「大学経営改革」社会から支持される大学であるために─仕事との関係における大学教育の意義と課題─吉武博通 筑波大学 ビジネスサイエンス系教授リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015ステークホルダーとの対話の積み重ねが不可欠61

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