カレッジマネジメント194号
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80リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015れない新たなビジネスモデルを構築し、スピーディに実行すること、加えてこれらの活動を世界各地でグローバルに展開することを、主たる経営課題として挙げている。求める人材像についても、「過去の延長線での経験や価値観では判断できないようなビジネスの変化に対応する新しい価値を生み出す力」(エレクトロニクス業界)、「モデル自体を変革し、新たなビジネスモデルを考え、それを実行するリーダーシップを持った人材」(百貨店業界)等、変革の担い手となり得る人材への期待が大きい。また、「事業投資の観点から金融知識など非常に幅広いスキルが要求されてきており、多岐にわたる事業のどこに行ってもビジネスを作れる人材が求められている」(総合商社)、海外ビジネスを担える人材として、「生産技術やマーケティングができる人、あるいはM&A等のプロジェクトを率いていく能力をもった人材をいかに確保・育成していくか」(化学業界)等、事業をグローバルに展開する上で、より高度な知識・スキルを重視する傾向も見られる。さらに、「海外であっても日本と同じように仕事ができる人」(建設業界)、「言語能力はもちろんのこと、ストレス耐性や異文化を受容できる柔軟性等の素養を持っている人」(化学業界)であること等も重視されている。従事者が増加するサービス業では、「何より人と接することが好きというホスピタリティ精神を持った人であることが第一条件」(フィットネスクラブ業界)、「パート、取引先の派遣社員など雇用形態が異なる人達との協働」(百貨店・流通業界)、「入店状況や雨が降った場合の対応、アルバイトが欠員となる場合の採用等常に先手を打って対策がとれるかどうか」(外食業界)といった点も重視されている。これらを含めて、各企業が重視する要素について、上記連載に登場するキーワードで並べてみると、1)自立(律)、主体性、能動性、成長意欲、目的意識、前向き、情熱、熱意、気概、チャレンジ精神2)好奇心、探究心、夢中になる、学ぶ意欲、問題意識、情報収集力3)論理的思考、本質を見抜く、考え抜く、多面的に捉える、全体を俯瞰、豊かな発想、クリエイティビティ、仕組みを構築する構想力4)プライオリティ、判断力、決断力、機転の良さ5)行動力、スピード、根気、最後までやり抜く、使命感、責任感、バイタリティ、ストレス耐性6)共感、人望、顧客からの信頼、周囲を巻き込む、協力・協働、チームワーク、コミュニケーション、伝える力と聞く力、ネットワーク7)誠実、思いやり、公正、倫理観、善き市民、多様性の尊重、ワークライフバランス8)異文化受容、言語能力、グローバル対応力という8つのカテゴリーに大別することができる。企業で大きく成長できる人材の輩出を求めているこのインタビューはいわゆる大企業を中心に行われているため、中小企業を含めた全体的な傾向を、労働政策研究・研修機構(2013年12月)「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」結果に基づき確認しておく。この調査の有効回収数は2783社で、雇用者300人未満の中小企業が約6割、300人以上1000人未満の中堅企業が約3割、1000人以上の大企業が1割弱である。この中で、競争力をさらに高めるため強化すべきものとして最も多くの企業が挙げたもの(複数回答)が、「人材の能力・資質を高めるための育成体系」(52.9%)であったという点に注目したい。また、正社員にこれまで求めてきた能力・資質と今後求めるものを問うた質問(複数回答)では、これまでは、「専門的な知識・技能、資格」(62.1%)、「業務を完遂する責任感」(61.9%)、「組織協調性、柔軟性、傾聴・対話力」(56.4%)の順であったのに対して、今後求めるものでは、「リーダーシップ、統率・実行力」(52.1%)、「専門的な知識・技能、資格」(49.9%)、「業務を完遂する責任感」(49.7%)の順になっている。いずれもポイントを低下させているが、「ストレスコントロール力」、「事業や戦略の企画・立案力」、「新たな付加価値の創造力」等は位置づけを高めている。企業は人材育成の余裕をなくし、即戦力を求めており、大学にも即戦力の養成が期待されるとの主張がなされることが多い。確かに即戦力を期待する企業も少なくないが、大企業のみならず中堅・中小企業も含めて人材育成を

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