カレッジマネジメント194号
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81リクルート カレッジマネジメント194 / Sep. - Oct. 2015一層重視する傾向が表れている。その中でどれだけ大きく成長し、変革や事業創出を担う人材として活躍できるか、その可能性の高い人材の輩出を大学により強く期待しているように思われる。自校の教育に今何が求められているのかを問い直すこのような要請に大学教育はどう応えていけばよいのだろうか。大学の規模、学部・学科構成、選抜性の高さ、学生の意識・学力等によって、どのような教育を提供できるか、いかなる教育が有効かは大きく異なる。企業が重視する要素についても、大学で習得した方が良いものと、仕事を通じて身につくものがあり、大学では前者の能力と後者の土台となる基礎力を養うことに重点を置くべきであろう。このような前提で、仕事との関係において大学教育が何を重視すべきか、これまで整理してきたことを基に考えると、その第一は、好奇心・探究心を養い、興味・関心の幅を広げ、自発的に学ぼうとする意欲を引き出すことである。「面白さを知る力」と言い換えることもできるが、与えられた仕事に主体的・能動的に取り組むためにも、仕事に意味や面白さを見出すことが不可欠である。第二は、思考力を養い、論理的思考、俯瞰的視野、本質を見抜く力、考え抜く習慣等を身につけさせることである。仕事の表層だけを理解して、処理を繰り返すだけでは、顧客や周囲からの信頼は得られない。従来とは異なる発想で新たな価値を創出するためにも、物事を多面的に捉え、深く掘り下げて考えることが必要である。第三は、行動と協働の機会を用意し、体験を通して仕事における行動と協働のための土台づくりをさせることである。これらの力が本格的に身につくのは実際の仕事を通じてだが、その段階への円滑な移行のためにも、大学段階での体験は有効であろう。第四は、仕事をすること、他者と協働すること、社会で生きること、生涯を通して成長すること等について、その意味や重視すべき事柄を考えさせた上で、大学で学ぶことや社会で仕事をするにあたっての目的意識を醸成することである。第五は、グローバル化やIT化等、急速に変化する社会に目を向けさせ、その中で何を重視して生きるべきかについて考えさせることである。それを通して、倫理観、多様性の尊重、異文化受容等の重要性も理解させていく必要がある。とりわけ、第一と第二については、それを身につけるのに大学ほどふさわしい場所はない。その役割が果たせていないとすれば、高等教育機関として存続する意味はない。最大の問題は、学ぶことの面白さと考えることの大切さを伝えることのできない教員にある。その役割を果たしている教員もいるが、不十分な教員も多い。目新しい施策を次々に取り入れて、消化不良に陥るよりも、自校の教育に今何が求められているのかについて、教員と職員が協働してその根本を問い直すことこそ求められているように思う。行動・ 協働 好奇心 思考力 自立、主体性、熱意、 リーダーシップの基盤 行動・協働の土台づくりの体験 (第三の要素) 興味・関心の幅を広げる (第一の要素) 論理的思考、深く考える、考え抜く (第二の要素) ※主に企業での活躍を想定したものだが、多くの仕事にも当てはまるものと考えられる 仕事との関係において大学教育が何を重視すべきか(概念図) これらに加えて、第四の要素、第五の要素(本文参照)を考えさせる

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