カレッジマネジメント195号
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19リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015多くの大学が都市部を目指すのはなぜか。学生募集の成果を高め入学定員をより確実にそして継続的に充足していくことが大学経営の最大の関心事だからだ。工場等制限法が撤廃された2002年以降、通学圏の人口が多く利便性に富んだ都市部へのキャンパス移転が、大学間の志願者獲得競争のあおりを受けて活性化してきた。そして今、2018年以降の18歳人口のさらなる減少を目前に控え、減少率が比較的少ない都市部を目指し、競合校も含めた全体的な都市部集中の流れの中で、郊外キャンパス型の大学は都市部への移転を検討しないことがリスクになる可能性も出てきており、大学の経営・発展を考えるうえでは必須検討要素となっている。2010年の特集で見てきた実際に移転を行った大学(学部)の事例では、その多くは募集に対しても好影響が出ており、都市部への移転は効果的な打ち手のひとつと言えた。しかし、今回の特集では、多くが志願者の獲得に好影響しているものの、都市部へのキャンパス移転だけでは、志願者の獲得が継続しない事例も見られるようになってきた。郊外から都市部に移転するということは、大きなマーケットを獲得できるというメリットはあるものの、デメリットとしては、競合が多い場所での競争に後発で参入するということであり競合関係も激変する。つまり立地の良い場所で長年運営したきた大学と真っ向勝負となるため、これまでにない差二の矢三の矢となる改革の打ち手を積み重ねていく必要もあるだろう。また、都市部へのキャンパス再配置は、大きな投資を伴うためその投資の回収期間は数十年にまたがり、長期レンジでは、18歳人口は大幅に減少していくことが予測されている。大学の長期の経営戦略としては、国内の18歳人口を対象とした高等教育機関として競合大学に勝ち抜くという選択をするのか、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」への転換を進めるのか、社会人を対象とした教員機関への転換を行うのか、はたまた国内へのインバウンドの留学生を対象にするのか、海外に進出するのか、通信教育で世界展開するのか…等様々な選択肢がある。そのためには、中長期のビジョンをどのように描くのかを先に決定する必要がある。そのビジョンを実現するために、どの場所にキャンパスを配置するのが良いのか? そもそもキャンパスを都市部へ再配置するための投資が必要なのか、他に投資すべき対象は何かなど十分な議論が必要だろう。立地戦略は非常に強力な武器であるが、大学ごとの個性や特色、ミッションを活かし、目指す将来像といった大学のビジョンを実現するための手段のひとつとしてキャンパスの再配置の検討が必要で、大きな全体戦略の中に有機的に組み込んでこそ、本質的・継続的な成果が発揮できる打ち手であると言える。別化が必要になるはずだ。本質的には、大学の価値は立地ではなく、そこで行う教育の中身であり、アウトカム(学習成果)である。これまでの事例では、全ての学部を移転できれば良いが、部分移転を検討する場合、理系学部や資格が取得できる実学系のアウトカムがはっきりした学部は募集力が高いため郊外に残し、比較的アウトカムの見えづらい文系学部を都市部へ持ってくる傾向があった。しかし、今後は文系学部においても立地の利点のみに頼るのではなく、その地でどのような教育を行い、その成果としてどんな人材を育成し、社会へ送り出していくのかというアウトカムを明確化し競合の大学と差別化していくことが今、強く求められている。また、2019年以降に設置が検討されている「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」は、産学が一段と連携しプロフェッショナルを育成する大学像だ。都心部にキャンパス設置したほうが産学連携の教育効率が高くなるため都心部への流れは今後も続くと思われるが、よりアウトカムが重視されるようになるだろう。キャンパスの移転は投資も伴い郊外のキャンパスの利活用も含めて大学としての重要な経営判断となる。その移転を、一時的な募集効果のみに留めず、継続的な大学全体の発展につなげていくためには、その地での産学連携や新たな学習環境を生かす教学改革等、特集 都市部を目指す大学Ⅱ長期レンジでの大学経営戦略としてキャンパス再配置の検討が必要4章
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