カレッジマネジメント195号
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21特集 都市部を目指す大学Ⅱとなる。また、学生の定員増はないため、文京キャンパスを拡大すれば、その分、八王子キャンパスの学生は減少する。八王子キャンパスが立地する八王子地域への配慮も必要である。これらの課題解決のために、2001年に文京キャンパス再開発構想検討委員会が設置され、2003年の答申を受けて同年に「文京キャンパス再開発プロジェクトチーム」が設置されて、そこでの議論がマスタープランとなった。そのプランは、2006年から2015年までの10年を3つのステージに分けて、キャンパス整備事業を行うというものだった。文京キャンパスの体育館、武道館、体育寮は、解体して八王子キャンパスに移設する、その跡地に教室棟や図書館を建設し、さらに老朽化した建物を改修する。これらを平常通りの大学活動に支障が生じないように、かつ、諸活動の安全を確保した中で行わねばならない。更地に建物を造るのとはわけが違う。10年間という長い時間が必要なのだ。都心回帰効果で志願者増キャンパス再編の基本的なコンセプトは、4年間同一キャンパスでの一貫教育体制の確立であった。八王子で行っていた商学部、政経学部の1〜2年生の教育を、収容力が拡大した文京キャンパスで実施することとし、全ての学部が同一のキャンパスにおいて、4年間を通じての教育体制の確立が可能となった。2015年1月に第3ステージを終了し、2015年4月より商学部と政経学部の1〜2年生が移転し、文京キャンパスの学生数は5120名と倍増した(図表1)。都心回帰の効果は絶大である。図表2は、志願者数の全体の推移と学部ごとの推移を示したものである。そもそも定員が多く、従って志願者数も多い商学部と政経学部であるが、新キャンパスでの教育が始まった2015年には、政経学部の志願者数は、約3600名から5000名弱へ、商学部では、約3200名から約5300名へと大幅に増加している。志願者数が増加することは、前年度のオープンキャンパスへの参加者が増加したことからある程度予想はついていたものの、これほどとは思っていなかった。キャンパスの都心回帰によって、どのような学生層が増えたのだろうか。データの分析結果によれば、東京の周辺の千葉県、埼玉県、神奈川県、やや離れて茨城県あたりまで含めて、関東全域から学生が志願するようになったとのことである。確かに、八王子であれば下宿を余儀なくされるが、文京区であれば自宅からの通学が可能な者にとって、4年間通学できることのメリットは大きい。都心のキャンパスとは、志願者の出身地域のエリアの拡大をもたらすのである。では、志願者が増えたことで、いわゆる偏差値は上昇したのか。答えは否である。大学の説明によれば、拓殖大学の学生と同程度の学力を持つが、従来は他大学に進学していた層が、文京キャンパスに移転して自宅からの通学可能になったために、拓殖大学を選択するようになったそうだ。大学としては、志願者の増大による偏差値の上昇は、現在は特段目的とはしていない。むしろ、今後、教育に力を入れ、優秀な学生層を社会に送り出すことで、翻って優秀な志願者がリクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 20150 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 学校全体 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 ※折れ線グラフは各学部別の志願者数推移(★印は移転した年) ※棒グラフは学校全体の志願者数推移 ★ ★ 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 国際開発 学部 工学部 外国語 学部 商学部 (1・2年) 政経学部 (1・2年) 商学部 (3・4年) 政経学部 (3・4年) 商学部 政経学部 工学部 国際学部 八王子国際 キャンパス (旧八王子 キャンパス) 文京キャンパス 改称 1学科改称 1学科設置 1~4年次一貫 国際学部 国際開発学部 工学部 外国語学部 商学部 政経学部 (人) (人) (年) 【各学部】 【学校全体】 図表2 志願者数及び学部配置の推移

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