カレッジマネジメント195号
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22増加するようになるという循環を期待しているという。八王子「国際」キャンパスへのリニューアル学生数の増加した文京キャンパスに対して、八王子キャンパスの学生数は3280名と、ほぼ半減である。広大な敷地と余裕のできた建物をどのように利用していくかについては、都心回帰と並行して計画が進められた。文京キャンパスにあった体育館、武道館、体育寮等の体育施設を移転したことは既に述べたが、加えて、陸上競技場やサッカー場を整備し、スポーツ関連の施設を集中することで、課外活動の充実を図った。さらには、400人を収容する学生寮を新設した。この学生寮は日本人学生のためだけでなく、留学生のためのものでもある。外国語学部や国際学部に留学生が多いことは容易に想定できるが、実は、拓殖大学の場合、工学部に最も留学生が多いという。それは、アジアの技術者養成を目的の1つに掲げているからであり、例えば、マレーシアの大学とツイニング・プログラムを持ち、現地の大学で2年間学んだ学生を受け入れ、後半の2年間の教育を八王子で行っているのである。2007年には八王子キャンパスも開設30周年を迎え、建物のリニューアルが必要な時期にさしかかった。文京キャンパスが縦に延びたビル型の建物で収容力増加を目指したのに対し、八王子国際キャンパスは、平屋型の横への広がりをもった建物とし、アクティブラーニングやPBL(課題解決型学習)ができるような教室への改修を行い、自律的な学習ができる空間を設けようとしている。また、2014年には産学連携を目的として、産学連携研究センター・マイクロ波研究棟を開設し、最新の設備のもとで地元企業との共同研究を行うほか、それ以外の産学連携にも力を入れている。これら、郊外型キャンパスの特徴を生かした整備事業は、一方で、国外を視野に入れたグローバルな展開をしつつ、他方で、地域との連携活動をすることで、レーゾンデートルを確保しているといってよいだろう。そして、2015年、キャンパス名を「八王子国際キャンパス」と改称した。八王子という地域に根付きつつ、しかし、国際をキーワードとしていることが、この新名称に表れている。両キャンパスの整備再編事業が完了した2015年は、新たな事業のスタートでもある。それが「教育ルネサンス」である。都心への回帰は、単に志願者の増加を目的とするものではない。4年間同一キャンパスでの一貫教育体制の確立という基本的なコンセプトをさらに発展させ、2020年の創立120周年を目指しての教育改革が次なるゴールである。それは、グローバルな環境に対応するタフな人間力を備えた「拓殖人材」の育成を目的とするものであり、具体的には、以下の8つの重点施策が定められている。1.国際交流と留学生教育の推進強化、2.スポーツを通したグローバル人材育成、3.実践的な職業教育の充実、4.女子学生比率の向上、5.ゼミナール教育の充実と強化、6.教育組織の見直しとカリキュラム改編、7.高大連携の推進、8.短期大学等との連携強化がそれらである。そもそも拓殖大学は、台湾協会学校として設立されており、アジアで活躍する人材の育成を建学の理念としていた。その理念が現在でも引き継がれていることは言うまでもないが、グローバル化が進む近年、再度、理念に立ち返り、その現代版による教育を行おうというのである。8つの重点施策は、それぞれに意味がある。例えば、「スポーツを通したグローバル人材育成」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて指導者的役割を果たす者の育成を目指しており、スポーツを通じて協調性、タフネスを養うことを狙いとしている。また、「ゼミナール教育の充実と強化」は喫緊の課題である。既に、初年次教育として1年生を対象にゼミ形式の導入教育を行っているが、これに、現行の2年生、3年生のゼミを有機的に連携させ、さらに4年生の卒論ゼミにまで拡大することに照準を当てている。特に、商学部、政経学部、外国語学部では、卒論やゼミ論を必修としていない学科があり、そうしたところで、4年間の学習の集大成として卒論を導入することが課題である。この課題は、「教育組織の見直しとカリキュラム改編」にも関連するものであり、カリキュラム・ポリシーを明確にして、科目のナンバリングを行い、カリキュラム・マップの作成を予定している。政経学部には、現在の学科制ではなくコース制の導入も考えている。卒業後の仕事の内容との連関がより見えやすいコースを作り、「実践的な職業教教育ルネサンス─2020年を目指して教育ルネサンス─2020年を目指してリクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015

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