カレッジマネジメント195号
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23育の充実」を図ろうというのだ。「ゼミを強化して、少人数の手厚い教育を行えば、それは学士力の質保証に結び付くものとなります。そのためには、カリキュラムを改革し、ところによってはコース制でもって専門教育として、より実践的な職業教育を行う。8つの重点施策は、それぞれ相互に関連するものなのです。こうした教育を受けた学生が社会に出ていくことで、拓殖大学に対する評価も上がります。地道な努力が、大学のブランドを上げていくと考えています」。川名明夫学長は、教育ルネサンスについてこのように語られる。「国際交流と留学生教育の推進強化」は、「拓殖人材」の育成には欠かせない。川名学長は、学生全員を在学中に1度は留学させたいと意気込んでおられる。この教育ルネサンスを支えるのが、図表3の教育ルネサンス推進本部であり、「2020広報プロジェクトチーム」が置かれていることは興味深い。教育に力を入れることは、大学として当然のことだが、それを学内外に知らしめていくことも、同じく重要である。というのは、2〜3年前、志願者が急激に落ち込んだことがあり、その時には、大学全体に危機感が走った。その原因を探るうち、受験生は拓殖大学に対して、古い、堅い、昔の大学…といったイメージを抱いていることが明らかになった。イメージとは異なる大学であることを如何に受験生に伝えるか、その時より広報戦略に一段と力が入れられるようになったという。それが、この「2020広報プロジェクトチーム」となったのである。「女子学生比率の向上」のためにも、古い大学イメージの払拭が課題である。現在の女子学生比率は約26.5%であるから、伸び代は大きいと言ってよいだろう。大学ブランド向上で1ランク上を狙う私立大学の定員管理に関しては毎年厳格になり、2015年に、2018年における収容定員8000人以上の大学について、入学定員超過率が1.10倍以上になると私立大学等経常費補助金の不交付の措置がとられることが発表された。拓殖大学の定員は8400名であり、1.10倍の基準が適用される。こうした基準は、学部の入学定員規模が小さいところほど、学生1名あたりの増減が大きく影響する。文京キャンパスの商学部は600名、政経学部680名と大規模であるが、それと比較すると八王子国際キャンパスは、外国語学部200名、国際学部300名、工学部320名と規模が小さい。リスクを減らすためには、学部再編等も視野に入れ、高校生の受験動向も踏まえつつ考えていると、川名学長は話される。いずれやってくる18歳人口100万人時代に備えて、安定的な志願者の確保は必須である。教育ルネサンスにおける「高大連携の推進」とは、高校との連携を強化し、新しい入試方法も検討して、入学者の安定的確保を図ることを意味している。大学のブランド力を上げて、1ランク上の高校を狙っての学生募集を掛けることを考えているそうだ。それ以外にも、企業からの資金、学生を留学させるために海外の機関の資金獲得も課題である。10年をかけた都心回帰のキャンパス整備事業によって、ハード面での整備は完了した。教育ルネサンスは、ソフト面での改革事業である。2020年まで5年間と、キャンパス整備事業の半分の時間しかない。いよいよ本領発揮の時が始まった。リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015(吉田 文 早稲田大学教授)特集 都市部を目指す大学Ⅱ図表3 拓殖大学創立120周年に向けた教育ルネサンス推進本部 組織図国際交流留学生センター国際部就職キャリアセンター就職部学生支援センター学生生活部体育振興部入学支援センター入学支援センター事務部学務部2020広報プロジェクトチーム「拓殖大学 教育ルネサンス」の取り組みにおいて、学生への教育内容及び学生がどのように育っているのかを広報していくために専門の広報プロジェクトチームを編成。次の時代を担う30代の事務職員を多く配置し、広報戦略の企画・提案と実働を担うとともに、活動を通して新たな視点での効果的な広報戦略を見いだすことを目的としている。文京キャンパス部会教学再生会議八王子国際キャンパス部会大学院部会高大連携部会拓殖人材育成広報会議言語文化研究所国際協力研究機構海外事情研究所日本文化研究所国際開発研究所日本語教育研究所イスラーム研究所拓殖大学創立 120周年 (2020)教育ルネサンス推進本部中期財政計画策定部会常務理事会

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