カレッジマネジメント195号
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29特集 都市部を目指す大学Ⅱ人超を擁する大規模キャンパスであった。ここから、名城公園キャンパス開設と同時に、商学部、経営学部、経済学部のビジネス系3学部の2年次以降、定員2370人を新キャンパスに移転した(図表1)。本特集が愛知学院大学に注目するのも、まさにこの移転のゆえである。愛知学院大学名城公園キャンパスは、名古屋の交通の要所たる名古屋駅から至近であるばかりか、愛知県庁や名古屋市役所に代表される官庁街、東海地方の一大ビジネス集積地である丸の内、栄を南に臨む、好立地である。ビジネス系学部の日進キャンパスでの学びに問題があったわけではない。移転以前も、実経済と関連した教育の提供が試みられており、これらの科目によって一定の成果も挙げてきていた。しかしながら、ビジネス系学部における学びの質を突き詰めて考えるなら、名古屋経済の中心地にこそ生きた素材が眠っていることもまた疑いのないところであろう。 前々から、新キャンパスを開設する機会を狙ってはいたが、なかなか適切な用地を見つけられずに来ていた。日進キャンパスにとどまるという考え方もあったところに、移転から遡ること2年前、国有地売却のニュースが飛び込んできた。用地購入に踏み切ったことは、今後、愛知学院大学にとって大きな分水嶺の一つとして振り返られることだろう。学校法人がイニシアティブを取り、経済学部の新設と軌を一にして、将来構想検討委員会が設置された。購入に競合が名乗り出るなど紆余曲折はあったのの、無事購入に至り、開設にこぎ着けたのである。この展開を決定づけたのも、学校法人の意向が「名古屋経済の再生」であったというのも大きい。名古屋経済圏の積年の課題として、自動車関連産業の浮き沈みに好不調が連動してしまう、ということがあった。名古屋経済を安定化させるためにも、名古屋の経済活動を知悉した有為の人材を輩出することが大きなカギを握っているのである。名古屋の名実ともに中心である、官庁街、ビジネス街の目と鼻の先に新キャンパスを設け、ビジネス系の学部を置くことは自然な流れでもあった。 愛知学院大学での学び、名城公園キャンパスでの学びここで、愛知学院大学の教育について目を向けてみよう。長い時間をかけて総合大学化を果たしてきた愛知学院大学の「伝統」を生かすシンプルな解の一つに、クロスオーバー型教育がある。学部や学年のみならず、大学の壁を越えて社会ともつながって、学ぶことを標ぼうしているクロスオーバー型教育には、6つのカテゴリーが設けられている(図表2)。詳しくは大学公式ウェブサイトも御参照頂きたいが、例えば、学外とのクロスオーバーである「コミュニティコラボレーション」の例としては、経営学部の講義で日進キャンパス近くの藤が丘商店街と協働し、商店街公認おやつを作成した実績がある。また、同じく学外とのクロスオーバーである「ビジネスコラボレーション」の実例には、文学部の学生が日本航空、近畿日本ツーリストと協働し、ハワイ旅行商品の開発等も行ってきている。学外とだけではなく、学内の連携にも取り組んできた。「クロスオーバーカリキュラム」の実例としては、文学部の英語英米文化学科での学生が、同じく文学部の日本文化学科の科目を受講して日本文化を学び、その成果を身につけたうえで海外に日本文化を紹介するといったケースや、心身科学部の学生が経営学部でマーケティング科目を受講し、スポーツ領域におけるマーケティングを考えるといったケースを想像して頂けばよいであろう(『大学案内2016』)。ただ、こういった学科や学部を超えた学びそのものは、総合大学ではまま見られるのもまた確かである。我々が意識すべきは、名城公園キャンパスにてどのようなクロスオーバーが生じているのかという点だ。リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015図表2 教育の特色 ─クロスオーバー型教育

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