カレッジマネジメント195号
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44リクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015てこの大学を始められた。蜷川家というのは、室町時代から続いている、教育の家系だそうです。次代の国家を背負う人材の育成に適切であろう法学部と、代々受け継いでこられた文化とが、蜷川先生の頭の中で融合した結果、幅広い基礎教育が本学の教育の特徴になりました。例えば、茶道です。『日本文化史』という1年生の必修科目の中にお茶の作法がある。むくつけき男子学生も週に1回、お茶室で茶儀に励みます。部活動では武道を奨励しており、剣道部、柔道部、弓道部があります。警察の採用で柔剣道2段以上だと加点されるということもありますが、それよりも、茶儀と同様、日本文化の継承、祖風継承の一環です」大森学長は、警察庁を退いた後、大手民間企業の役員を10年間務めた経験から、文科省のいう就業力の重要性はよく理解できるという。「けれども、そういう実務能力だけではなく、リベラルアーツというか、文化的な、一般的な社会人としての教養というのは、やっぱり大事だなと思っているのですよね。その配分は難しいところですが、大学としては、就業力の前に、立派な社会人になってほしいという気持ちも強いですね」。民間企業就職率も向上取り組みの成果として、公務員(警察官を含む)だけでなく民間企業を合わせた就職率も高い水準にあり、 2015年には学部別実就職率の法学部で全国1位となった※2。警察官・公務員合格者が全体の数字を押し上げてはいるが、試験範囲の広い公務員試験の対策を強化した結果、一般企業の採用試験もカバーでき、好成績につながった面もあるようだ。奥村特任教授は、3年生の必修科目である「就職情報概論」の役割が大きいと指摘する。「通年ですから、講義が30回ありますが、就職の、非常に基礎的な問題から入り、相当広範囲に取り扱います。具体的に言えば、就職活動の仕方から、エントリーシートの書き方、面接、警察官に必要な知識まで。一部、志望進路に応じた内容もありますが、基本的には公務員志望でも民間企業に進む学生でも、共通する事項を扱っています」(奥村特任教授)就職先での卒業生の評価も、成果指標の一つだ。「例えば警察について申せば、まず、うちの卒業生はほとんど辞めないのです。もともと警察官は、警察学校で既に1割ぐらい辞めちゃうとか、辞めるのが多いのですが」(大森学長)3年離職率が3割といわれる昨今、すぐに辞めないというのは高評価のポイントだろう。「それと、警察の場合、大卒の新人を評価する上司が高卒ということが多いのです。その中には大卒は嫌いだという人も意外と多い。でも、本学の卒業生は、『俺は大卒だとかひけらかさないし、まじめにやってくれる』と評価されています。たぶん民間企業でも同じでしょうけども、そういうタイプが多いのだと思います」(大森学長)実績をもとに第二の柱づくりへ現状を踏まえての今後の構想を、大森学長はこう話す。「まず警察官就職率全国一というのは、維持したい。現に、そう志望して本学に入ってくる学生が多い以上は、就職の希望は、できるだけ実現させてやりたい。次に、女子力を高めたい。警察官志望で入ってくる女子学生も随分いるのですが、女子比率がまだ2割強なので、これを3割に持っていきたい。例えば去年は本学から5名の女子が警視庁に合格しました。実は警察も、女子の採用を増やしているのです。ことに警察官・公務員を志望する女子高校生にはチャンスなので、ぜひ入学してほしいと熱烈に思っています」これらの構想の一方で、警察官養成所と化すのは、本意でないとも大森学長は言う。「だから端的に言えば、第二の柱が欲しいですよね。その努力はしているつもりですけれども。やっぱり警察官志望の学生が多いので、その兼ね合いが苦労している点です」。では第二の柱は何かとなると、現状で警察に次いで多い進路は、消防官、地方公務員、民間では警備業等だが、どれも決め手を欠くのが悩みという。「しかしこれは私どもが決めることじゃなくて、学生が決めることですから。学生の動向を見なくてはいけません。10年前に警察官志望者が増えたのと同じように、自然発生的に決まればよいと思います」(大森学長)(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)※1 2014年大学通信調べ※2 AERA進学ムック「就職力で選ぶ大学2016」より

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