カレッジマネジメント195号
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51て、2013年データで日本は187 カ国中17位、ジェンダー不平等指数(GII)において、149カ国中25位である一方で、世界経済フォーラムが2014年に発表したジェンダー・ギャップ指数(GGI)では、142カ国中104位であり、韓国(117位)とともに下位にとどまっている。例えば、2013年の日本の女性就業率(15-64歳人口に占める就業者数の割合)は62.5%とOECD平均の57.5%を上回っているが、2014年の総務省「労働力調査」による管理的職業従事者に占める女性割合は11.3%と、欧米諸国が3割から4割の水準にあるのに対して著しく低い水準にとどまっている。また、民間企業(常用労働者100人以上、2014年)の階級別役職者に占める女性割合では、係長相当で16.2%、課長相当で9.2%、部長相当で6.0%と、上位役職ほど減少する傾向にある。公務員(2014年)の場合、国の地方機関課長・本省課長補佐相当職以上に占める女性割合は5.6%、都道府県本庁の課長相当職以上で7.2%、市区の課長相当職以上で13.1%となっている。2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とするという国の目標(「2020年30%」)とは大きな隔たりがある。労働慣行や働き方の変革が女性の活躍の鍵このような状況を踏まえ、国は、2015年7月に示した「第4次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」の中で、男性中心型労働慣行等の変革と女性の活躍、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大、雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和、科学技術・学術における男女共同参画の推進、男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備、教育・メディア等を通じた意識改革・理解の促進等12分野を掲げ、具体的な取り組みを記載している。そのうち、労働慣行や働き方の変革は特に重要と考えられる。素案の中でも、M字カーブ問題の解消に向けたワーク・ライフ・バランスの実現(長時間労働の削減、ライフイベントに対応した多様で柔軟な働き方の実現等)、家事・育児・介護等に男性が参画可能となるための環境整備、男女共同参画に関する男性の理解の促進、ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差の是正、非正規雇用労働者の処遇改善と正社員への転換支援等の取り組みが挙げられている。このうち、女性の就業率が出産・育児期に当たる30歳代で一旦低下するM字カーブ問題は、欧米先進国にはない、日本と韓国に特有の現象とされている。日本でも近年M字の谷が浅くなる傾向にあるが、その解消には至っていない。また、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている集団に対して、積極的に差別を是正する措置であるポジティブ・アクションに取り組む企業は、規模5,000人以上では64%であるが、全体では16.9%にとどまっている(2013年度の厚生労働省調査より)。ポジティブ・アクションには、指導的地位に就く女性等の数値に関する枠等を設定する「クオータ制」と達成すべき目標と期間を示して実現に向けて努力する「ゴール・アンド・タイムテーブル方式」等の方法があるが、その意義や課題についての理解をさらに広めていく必要もある。多様性の尊重こそイノベーションの源泉ここまで女性の活躍推進について、全般的な状況を見てきたが、世界的に高く評価されている企業には、多様性の尊重こそイノベーションの源泉との強い信念の下、女性の活躍にとどまらず、広くダイバーシティーに取り組む企業が多い。例えば、日本IBMは同社HPの採用情報の中で、「市場競争におけるIBMの強みの源泉は、思想、文化、人種、性別や出身地などさまざまな違いを持つ人材の多様性(ワークフォース・ダイバーシティー)であり、これこそがIBM自身とお客様とに多様な発想をもたらす基盤となっています。実際のところ、営業、製品開発、サービスの提供など広い分野で、IBMの社員構成は多様化した市場の縮図ともいえます」と述べ、グローバルな市場動向の反映として、機会均等への社会責任、管理者層の多様性の促進、文化的相違の受容と認知、女性の能力活用、障がいのある人々及びLGBTの能力の最大化、ワーク・ライフ・バランス、の6項目を掲げている。LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を並べたもので性的マイノリティを意味し、日本でも人口の7.6%を占めるとの推計がある。IBMのみなリクルート カレッジマネジメント195 / Nov. - Dec. 2015

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