カレッジマネジメント196号
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10リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ大学は学業を含めて余裕を持って、自ら考え、実践できる唯一の場。学生自ら選択したカリキュラムやゼミに対して、どれだけ突っ込んで学習し、教授に指導されながら調査したのか、その取り組み方を重視している。技術系の内定者には、教授が取り組みのプロセスを含めて親身に指導し、学会発表までやらせてくれたという学生が多い。(通信会社)偏差値の高い大学になればなるほど専門性に特化していき、学問を究めれば究めるほど周囲と接する機会が少なくなってきている印象がある。専門性を高めることと並行して、大局的に物事を捉え、周囲を巻き込みながら問題を解決していくロジカルな思考法ができる教育もしてほしい。(製薬会社)就職に有利だからと資格取得に走る学生もいるが、そういう時間があれば、もっとアカデミックな学問領域を追究してもらいたい。(建設会社)外国人と真にコミュニケーションするには単に英語のスキルだけでは通用しない。自身の確固とした考えや、時には日本についても語れるようなアイデンティティが問われ、リベラルアーツ教育が極めて重要。専門性を含めた勉強をしっかりとやらせてほしい。(電機メーカー)チームワークで何かをやったという経験が乏しく、何かを成し遂げたという達成感を味わっていないように感じる。大学時代に自由なフィールドの中で、学生本人がやりたいことをやり遂げられる環境を。(通信会社)知識を吸収することは必要だが、企業はその知識をどう活用するのかという行動に主体を置いており、具体的な行動に結びつくことが重要。大学も行動力に着目した学習など何らかの手を打ってほしい。(IT企業)勉強も含めて自分なりに苦労しながら突き詰めて答えを探し出すという探求心が不足している。大学の4年ないし6年間で何かに挑戦し、失敗を繰り返しながらも達成した経験や自信を持たせてあげるようなことを取り組んでもらいたい。(電機メーカー)自分なりの目標をちゃんと描いて、それに向けて一生懸命に努力したことを明確に言えるような意識付けをしてもらいたい。内定をもらえない学生は、勉強は一生懸命にやってきたが、何をやりたいのか明確に言えない人が多い。それがはっきりと言えれば全然違う評価になると思う。(コンサルティング会社)徹底的に考えさせる、考え抜くという経験を通じて自分なりの判断基準や考え方の軸が身についてくる。知識の修得だけではなく、物事の本質まで掘り下げて、考え抜く経験を積んでほしい。考え抜くことで相手に何を伝えたいかも明確になる。それはグローバルコミュニケーションでも必要なことだ。(自動車メーカー)図表2 大学教育の成果に対する企業の要望(コメント)学業領域学習・活動領域そして、見てきたように、企業は自社の求める人材像と学生の資質の適合性を、大学時代の学業成果や経験を“通して”見極めようとしている。選考における成績表の提出やエントリーシートに記入させるエピソード等はそのためのツールだが、単なる成績表の数字や学生の自己アピールにとどまらず、専門領域の具体的な成果や学生の「行動特性」を表現するリアルで客観的な情報を企業は求めているように思う。従来の、ゼミ発表や卒業論文といった専門領域のアウトプットに加え、昨今増えている企業や地域と連携したプロジェクト型の学習やアクティブラーニング型の授業、留学等を通して学生がどのような能力を身につけ、何ができるようになったのかについて、そのプロセスの評価も含めて大学がきちんと証明・保証して社会へ引き継いでいく方法を考えることも、今後は必要になっていくのではないだろうか。

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