カレッジマネジメント196号
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13リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016です。10月1日時点で2社以上から内定を取得している学生の割合が、2015年度には51.1%だったのに対して、2016年度は61.6%(就職みらい研究所「就職プロセス調査」)。これは非常に高い数値です。企業の採用意欲が高かったことに加え、就職活動期間が長かったことも影響していると考えられます。もうひとつは、地域差が見られたということ。例年、就職内定率の推移において地域間格差はあまり見られないのですが、今年度は「関東先行」が顕著でした(15頁、図表6)。就職内定率を月ごとに追いかけていくと、5月頃から9月頃までにかけて、他地域よりも関東の大学生の値が明らかに上回っていたのです。いくつもの要因が重なった結果ではありますが、ひとついえるのは、これは学生の実態というより、企業の採用活動が「首都圏中心」の傾向が強かったということです。これは定性的な情報から集約した考察ですが、今年度は全般的に企業による大学訪問が強化されているものの、その地域格差は鮮明だったようです。企業が採用活動に充てられる時間は有限。であれば都心に近い大学をこまめに回り、遠隔地は劣後に置くと考えることは容易に想像できるでしょう。あと、気になっているのは、今年度の採用活動は非常に“コンサバティブ”であった、ということです。これまでは採用競争が激しい時期は、奇抜なアイデアを駆使した採用手法等が編み出されやすいのですが、今年度はあまり目にしませんでした。それも時期変更の対応に追われた企業に「余裕がなかった」表れでしょう。――今年度の就職活動について、「学業優先」や「留学促進」といった本来の目的は達成されたのか、大学側の声を教えて下さい。今回の時期変更を評価する声として、3年次の学業が阻害されなくなったという意見があります。しかし当然ながら、その分、4年次の卒論の時期に就職活動がぶつかることになりました。それをトータルにどう評価するのか、どう対応していくのかは、今後の課題と言えるかもしれません。留学促進という観点については、無論、今年度のようなスケジュールが何年にもわたって定着していかなければ、政府の考える「留学生増加」といったシナリオは実現しないでしょう。しかし、そもそもその前提となっている、「就職活動に不利だから留学しない学生が多い」という認識は改めるべきだと思います。学生が留学に消極的になる主な理由は、様々な統計が示すように、経済力や語学力の問題です。実態として採用場面において、留学が不利に働いているかといえば、むしろトレンドは逆であるといえます。通年採用は幅広く定着していますし、留学生枠を設ける企業も増えています。その意味で、「留学生マーケット」は採用市場の中で成立しつつあります。そのマーケットで勝負できる学生は、時期的な制約をあまり受けないはずです。図表3 採用活動時期の変化(15卒→16卒→17卒) 3カ月繰り下げ 4カ月繰り下げ 2カ月繰り上げ 2015年 卒 採用 2016年 卒 採用 2017年 卒 採用 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 インターンシップ期間 広報期間(母集団形成期間) 維持 選考期間 広報期間(母集団形成期間) 選考期間 広報期間(母集団形成期間) 選考期間 インターンシップ期間 インターンシップ期間 特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡ大手企業と中小企業の開始時期が逆転
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