カレッジマネジメント196号
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16教育・学習が個人や社会にもたらす成果(アウトカム)をいかなるものと見なし、どう測定するかは、政策立案、研究、実践の場で重要課題になりつつある。ただ、教育・学習の成果を経済的豊かさに還元するだけではいまや不十分だ。もっと射程を広げて「社会的」かつ「文化的」な成果として捉える必要が生じている。大学教育についても同じことが言える。自らが提供する教育がどのような社会的成果をもたらしているのか、大学はこれまで以上に自覚的でなければならない。そのためにも、自らの持つ条件や強みを理解しそれらを戦略的に展開していく必要がある。そこで本稿では、京都工芸繊維大学(以下、京都工繊)の取り組みに目を向けたい。京都工繊は、小規模ながらも強い個性を持つ単科の工科系国立大学として注目を集め、このところ急速に社会的認知度を上げている。実際に目を引く成果も出している。2013年度には文科省「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」、2014年度には「スーパーグローバル大学創成支援事業」(タイプB:グローバル化牽引型)に採択された。リクルート進学総研が高校生を対象に実施した「進学ブランド力調査」では、ここ数年で関西地区の理系志願者による志願度が上昇し、日本経済新聞社と日経HRが企業人事担当者対象に行った大学イメージ調査(就職力ランキング)でも総合14位につけるなど評価を上げている。それら評価結果を見る限りでは、京都工繊の提供する大学教育の成果に対して、入口(高校生)からも出口(企業)からも評価が高まっている可能性が高い。結論を先取りして言えば、京都工繊は、“京都”“小規模”“工科系”“国立大学”といった属性を十二分に活かした戦略を具体的施策として展開できているところが「個性的」で「強い」。そんな取り組みからはどんな成果が生み出されているのだろうか。今後の課題は何だろうか。黄金色に色づく銀杏が印象的な晩秋の松ヶ崎キャンパス(京都市左京区)に古山正雄学長を訪ね、お話をうかがった。京都工繊が育成を目指す「TECH LEADER」京都工繊の歴史は、京都産業界の要請を受けて設置された京都蚕業講習所(1899年創立)と京都高等工芸学校(1902年創立)に始まる。両機関とも戦時中に専門学校(旧制)となり、1949年、それらを母体に工芸学部と繊維学部からなる新制「京都工芸繊維大学」が誕生した。2006年には二学部を統合し、工芸科学部が設置されている。2015年5月現在、学士課程には生命物質科学域、設計工学域、造形科学域の3領域の下、2763人が学び、大学院工芸科学研究科には1257人の学生が在籍している。こうした沿革が示すように、あるいは「工芸繊維」という名称が示唆するように、京都工繊の特徴は、一貫して「ものづくり」に関わる人材を実学ベースで育成してきたところにある。110年余りに及ぶ伝統を通して「知と美と技」を探求する独自の学風を築き上げ、学問・芸術・文化・産業に貢献できる有為な人材を輩出してきた。リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016グローバル×地域×イノベーションで育成するTECH LEADER京都工芸繊維大学C A S E1古山正雄 学長

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