カレッジマネジメント196号
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17特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡそうした伝統を踏まえつつ、京都工繊が今後10年を見据えて、いま新たに打ち出す基本戦略は、グローバル、イノベーション、コミュニティーに係る「3つの中核拠点」の形成だ。即ち、COG(Center of Globalization)、COI(Center of Innovation)、COC(Center of Community)の形成を通して、国際的な共同研究・共同教育の展開や世界一線級の研究ユニット誘致、イノベーションを通した産業界への貢献、地域社会の活性化のための拠点となることを目指している(図表1)。古山学長は、小規模校である利点を活かして、これら3つの中核拠点を一体的・融合的に運用し、いかに教育効果を高めるかがカギになると語る。かかる基本戦略の下、京都工繊が育成を目指す人材像こそ「TECH LEADER」だ。京都工繊が育成するのは現場で働く単なるものづくり職人ではない、現場で職人のものづくりを指示する側に立つ人材だと古山学長は強調する。ある種のリーダーシップがなければ現場は動かない。しかも、グローバル化が進行する中、現場は必ずしも日本というわけではなくなってきている。今後ますます求められるのは、専門分野についての確固たる知識・技術を有し、グローバルな現場を統率し、方向性を決め、結果を出せるリーダーだ。そのためには語学力も必要だし、日本文化はもとより諸外国の文化への理解も必要だ。京都工繊が育成しようとするTECH LEADERとは、専門性、外国語運用能力、リーダーシップ、文化的アイデンティティに裏打ちされた人材だといえる(後出の図表3参照)。機能強化に向けた大学システム改革京都工繊は、3つの中核拠点形成を戦略的に進めるため、既に具体的な大学システムの改革に着手している。「3つのプロポーション改革」がそれだ。大学内の3つのプロポーション、つまり「比率」を変えることで大学の機能強化を図ろうとしている。ここでいう3つの比率とは、①入学定員、②教員職位、③収入における比率のことだ(図表2)。①の入学定員改定では、学部の入学定員を減らす一方で修士課程の定員を増やし、大学院機能の強化を図ることが目指されている。定員改定は2014年度に造形科学域から始め、今年度から全学展開した。単に入学定員の比率を変えただけではない。「3×3制(スリーバイスリー)」と呼ぶカリキュラム改革と、学事暦変更によるクオーター制導入も同時に実施されている。「3×3制」とは、入学後の前半3年間に学士課程レベルの基礎教育リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016 図表1 京都工芸繊維大学の目指す基本戦略 「3つの中核拠点」 Global: COG Innovation: COI Community: COC Harvard Aalto RCA ETH NUS Chulalongkorn Stanford NC State Kyoto Institute of Technology 京都工芸繊維大学 建築・ デザイン グリーン イノベーション 高分子・ 繊維材料 ヘルス サイエンス 図表2 機能強化に向けた 「3つのプロポーション改革」 ①入学定員:学士減・修士博士増による大学院機能強化 ②教員職位:教授を中心とするシニア層から若手へのシフト ③収入における比率:外部資金の増により2:1:1の収入比率を実現 博士 博士 修士 学士 教授 准教授 助教 教授 准教授 助教 修士 学士 増 増 増 減 減 62名 113名 135名 運営費 交付金 44億円 (57%) 運営費 交付金 (50%) 学生 納付金等 (25%) 学生 納付金等 23億円 (30%) 外部資金 (科研含む) 増 10億円 (13%) 外部資金 (科研含む) (25%)
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