カレッジマネジメント196号
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18を行い、後半3年間で専門性を高める6年一貫教育のことだ。特に、学士課程卒業生の7割超が進学することを前提に、学部4年生から修士2年生にかけての3年間をM0・M1・M2と見なし、教育の高度化で専門力や実践力育成を目指すのだという。ここにクオーター制を組み込むことで、修士課程における海外インターンシップや海外大学の連携(ジョイントディグリーやダブルディグリーの構築)に取り組みやすい条件を整えることができる。さらに博士課程3年を加えて「3×3×3」と考えれば、学士で基礎を固め、修士で専門力を培って社会化し、博士でアカデミックな研究を推進するといった段階的な人材育成が可能になる(図表3)。こうしたカリキュラムの充実を図るための取り組みとして、京都工繊は2014年度から京都府立大学・京都府立医科大学と共同で教養教育の提供を開始している。文部科学省「大学間連携共同教育推進事業」に採択された取り組みで、複数大学による教養教育共同化は全国初の試みだ。三つの大学が科目を出し合って学生の科目選択の幅を広げるとともに、文系・理工系・医学系という異なる専門の学生達が机を並べて共に学び合い、教養を高めていくことが期待されている。②の教員職位のプロポーション改革は、教授中心でシニア層の厚い逆ピラミッド型の教員構成を改め、40歳未満の若手教員にシフトさせることを意味している。教授数を減らしてその分のポストを助教等の若手に還流させ、シニアから若手までチームとなって研究を推進するバランスの良い研究体制を構築することを目指している。将来的には、教授:准教授:助教の比率を現状の5:4:2から1:1:1にしていく計画だという。このための取り組みの一つが2014年度から始まった「栴檀(SENDAN)プログラム」で、研究専念型で年俸制・テニュアトラック制を取り入れた公募で若手教員の採用を推進している。その際、理工系に少ない女性研究者を増やすことに力を入れることで、研究者の男女比率も変えていきたいと古山学長は述べる。③の収入比率の改革は外部資金を増やすことだ。運営費交付金が年々削減される中、どの国立大学にとっても外部資金獲得は喫緊の課題だ。今後増員される若手研究者には頑張って外部資金の獲得に努めてほしいと古山学長は期待を込める。こうした既存の比率は「歴史的に形成されてきた生活習慣病のようなもの。ダイエットを通して痩せながら健康体を作ることが必要」と古山学長は表現する。なるほど、プロポーション改革は京都工繊の組織体質を根本的に変えようとする試みだ。京都工繊の今後の方向性を左右するものだとみていいだろう。リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016図表3  TECH LEADER養成プロセス 3年次後期~4年次 地域課題解決型学習(PBL)や地元企業・海外(地元企業の海外拠点)でのインターンシップを中心に、実践的・能動的な学修に取り組む 1年次~3年次前期まで 同じ課程に所属する他の学生と共に専門基礎力を身につける 図表4  「地域創生Tech Program」の概要 ● 理工系人材育成機関設置による若者の地域定着、地域活性化 ● 理工系産学連携拠点形成による産業イノベーションの創出 京都府北部・北近畿への地方進出 シルクバレー メタルバレー コンポジットバレー ヘルスエンジニアリング サイエンスアグリ ツアーインダストリー  環境エネルギー工学        etc. 国立大学の役割

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