カレッジマネジメント196号
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20近年、女子学生を獲得するために、女子をひきつける学部を設置し、女子を意識した広報や施設を整える大学は多い。しかしほとんどの場合、入学後は男子学生と同じキャリア教育・就職支援しか提供されず、学生達もそれを当然だと疑問も持たない。こうした現実に強い違和感や危機感を覚えていた。「女性が輝く社会」の実現に向けた議論が活発に行われているが、大学時代から意識と行動を変えていく必要があるのではないか。そうした筆者の問題意識に明確に答えてくれたのが、昭和女子大学の取り組みである。女子学生に必要なキャリア教育とは何か。坂東眞理子学長にお話をうかがった。21世紀型の女性のライフモデル昭和の時代、女性は学校を卒業後、少し社会勉強し、いい人と出会って結婚し、子どもを育て、温かい家庭を築くことを社会から期待されていた。多くの女子大学はそうした需要に応えた教育を行ってきたし、昭和女子大学もその典型であった。しかし今や、夫の収入のみで生活していくことは困難で、こうした昭和型モデルはもはや通用しない。「経済負担も育児も家事も男女が分担していく新たな時代で、女性達がのびのびとしなやかに生きていくために必要な力を身につけていくことが重要です」と坂東学長は話される。昭和の時代から、男性は企業が教育をしてくれたが、女性は必ずしもそうではなかったため、自分の力を証明するための資格をとることが重視された。現代でも不景気を背景に資格志向が強くなる時期もあるが、最も大事なのは資格の取得そのものではなく、社会で通用する基礎力を総合的に育てることである。それはスキルとしての英語やICTに限らない。組織の中でチームの一員として、あるいはリーダーとして働くことが女性にも求められている。また女性は、結婚・出産・育児というライブイベントをキャリアの中でどのように調整していくのか、という課題に直面する。しかも、それは時期も状況も一人ひとり異なっており、自分で考えて選択できる力や、パートナーを選ぶ目も養わなければならない。社会通用性と、長い目で見たキャリアを自ら設計する力。21世紀型の女性のライフモデルに必要なこの2つを獲得させるために、昭和女子大学は様々な工夫をしてきた。女性のロールモデルとしての人材バンク「社会人メンター制度」まず、非常にユニークなのが「社会人メンター制度」だ。いわば、働く女性の実物大のロールモデルに触れさせる取り組みである。現在の学生の母親の多くは、専業主婦かパートで仕事をしているパターンで、働いている女性というと学校の先生くらいしか知らない学生が大半である。女性の多彩な生き方を支援するに当たり、そこをまず正す必要があった。実際にメンターに触れた学生達の最初の反応は、「こういう仕事があるんだ」という程度のものから始まるが、メンターとの出会いによって、自分の将来を具体的リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016女子学生に必要な21世紀型キャリア教育を切り開く昭和女子大学C A S E2坂東 眞理子 学長

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