カレッジマネジメント196号
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21特集 “学ぶ”と“働く”をつなぐⅡにイメージし、学生時代の過ごし方に対する自覚を得られるようになっていく。どういうきっかけで、いつ頃に始まったのか。坂東学長は、2005年に女性文化研究所長として着任し、そこで公開講座を開催していた。その中には基調講演だけでなく、働く女性達と学生がグループに分かれて話し合う試みがあり、非常に評価も高かった。そこで、2011年の就業力GPを契機に、より組織的に取り組むべく、3年以上の就業経験のある社会人女性をボランティアで募った。ボランティアで果たしてどれくらい集まるか心配だったが、新聞で取り上げられたこともあり、500名余りの女性から「自分の経験を役立てたい」と応募があり、この中から300名ほどで人材バンクを作った。メンターの中で昭和女子の卒業生は1割程度で、あとは大学とは無関係の社会人女性達である。職業、置かれた状況、年齢、人生経験等、メンターの属性は非常に多様だ。メンターと45分間1対1の「個別メンタリング」を受けたい学生は、学内検索システム(図表1)で、希望の条件(年齢、職業等)やキーワードで希望のメンターを検索して予約すれば、日程調整はキャリア支援センターが行ってくれる。利便性が極めて優れているのも特徴だ。ただ、この方式だと1カ月に10~20人ほどしかメンタリングを経験できない。そこで、土曜日の午後、テーマを決めてメンターとグループディスカッションする「メンターカフェ」を始めた。例えば「管理栄養士として働く」「留学経験を活かす」といったテーマを設定し、テーマにあったメンターに来てもらうものだ。さらなる仕組みとして「メンターフェア」も始めた。お昼休みにメンターに大学まで来てもらい、予約なしで会話をするもので、「この人とならもう少し話をしてみたい」といったきっかけづくりの場となっている。メンターに求めるのは、具体的な進路指導というより、将来に対してのモチベーションを与えることである。そのため、就職活動の時期ではなく、もっと早い段階での活用を念頭に置いている。1年次から仕組みの存在は伝えておき、カリキュラム上は、2・3年次の選択必修の科目で、1セメスターに1回は個別メンタリングを受けることを、教員から奨励してもらっている。こうした試行錯誤の結果、今では約半数の学生がメンター制度を利用するまで広がった。女性のキャリアや社会の仕組みを伝える「社会人メンター制度」は学生に気づきややる気を与えているが、それと同時に、社会の仕組みや職業等について、体系的に理解を深めることも重要だ。専業主婦を夢見ても、現実的には難しいことさえ学生達は意外と知らない。会社の名前もよく知らないし、女性にとっての良い企業という問題意識も持っていない。昭和女子大学の女性文化研究所では「ホワイト企業ランキング」を発表している。いわば、女性が働きやすい良い会社のランキングだ。ランキングの指標は、①ワークライフバランス基準(有給、育休、残業手当等)、②女性活躍基準(女性管理職比率等)、③フレキシビリティ基準(在宅勤務、フレックスタイム制度、社内応募制度等)の3カテゴリーで作っている。特に女性管理職の比率や男女の平均給与の差等、企業自身も把握していないデータも多い中、苦労しながら進めてきた。一方で学生たちにとって良い企業ランキングを作らせたところ、①ワークライフバランスは重視しているが、②③にはほとんど関心を持っていないことが分かった。実際に働きながら家事や子育てを両立している者の目からみれば、働き方に自由度があり自主性を持てることが極めて大事なのは明白なことだが、学生にそういう意識はまだないという。以上は一例だが、学生の認識と現状のギャップを1年次リクルート カレッジマネジメント196 / Jan. - Feb. 2016図表1 メンター検索画面
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